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何度か訪れたことのある大沢山温泉にある旅館の部屋の窓からは、巻機 山の姿を真正面に見ることができ、女将さんがこの山の素晴らしさを嬉 しそうに話してくれたものだった。とくに冬の露天風呂からの眺めは申 し分なく、いつか登ってみたいと思っていた。
登山口の桜坂駐車場に着いたのが3時半で、しばらく仮眠をしようと思ったのだが予想外に寒くて眠れなかった。しょうがない ので早めに出発することにした。5時10分、登山開始。直後にコースの分岐だ。ヌクビ沢コースは状態が良くなさそうなの で、一般的な井戸尾根コースに進路をとる。岩と根と粘土質の登山道で、鬱蒼とした林の中は野鳥と蝉の大合唱だ。なかなか登 り応えのある坂が続き、早くも汗だく状態だ。眺望なしの面白みのない急登をひたすら40分登ると5合目に着いた。ここで初 めて前方視界が開け、山頂方向らしい眺望が得られたが、果たしてこれが山頂かは疑問だ。一服したあと歩き出す。再び林の中 を進み、相変わらずの上りで息が上がるが、道の脇にはコイワカガミがたくさん咲いており、その可憐な姿に癒される。30分 で6合目展望台に着いた。目の前の天狗岩とヌクビ沢の眺めは圧巻だ。7合目になると樹林帯を抜け、振り返るとまず谷川岳の 眺めが目に飛び込んできた。前方には前巻機山で、まずはそこのピークを目指す。梅雨入りしたというのに今日はいい天気で、 山頂からの眺望が期待される。樹木の背は低くなり、笹原の道を進むと8合目で、周りの斜面には小さな雪渓がいくつも残って いた。青空と雪渓の白と山肌の緑のコントラストがとてもいい。すぐに9合目で、ここにはニセ巻機山の頂標が立てられてい た。ここまで来れば山頂まではもう一息で、木道を一旦下ると避難小屋があった。山頂に向かう前に陽射しを避け、ひと休みす るため中に入ってみたが、この避難小屋はすごく綺麗だった。さて、ラストスパートといこう。目の前の山頂へ登り返す。はじ めは池塘の点在する湿地帯の中を平坦な木道が敷かれていた。このような光景は久しぶりなので、なんだか嬉しい。昨年登った 会津駒ケ岳の山頂直下に似た雰囲気だ。進路がやや右に向くと、木段に変わり最後の上りとなる。そろそろ息が上がってきたこ ろ、ようやく山頂に到着した。この先には道が続いており、そちらの標高が高いのだが、ロープが張っており入れないというこ とだ。さらに牛ケ岳へも手軽に行くことができるそうだが、今回はここで止めておいた。山頂に着いてまず目に飛び込んできた のは、向こう側の眺望だった。八海山、越後駒ケ岳、中ノ岳の越後三山が突然現れた。その眺めに疲れも忘れ魅入ってしまっ た。さらに振り返るとこれがまた凄い。真正面には谷川岳、一ノ倉岳、茂倉岳、仙ノ倉山の谷川連峰がでんと居座り、その左奥 には富士山がくっきりと見えた。その隣には赤城山、さらに手前には武尊山の山々だ。谷川岳の右側には苗場山、その奥に草津 白根山だ。さらに妙高山と火打山、トドメはその奥に雪をまとった北アルプス白馬連山だ。谷川岳の向こうには薄っすらと噴煙 を上げる浅間山まで見ることができた。おまけに魚沼平野のずっと向こう、日本海には何と佐渡島の影がうっすらと望めた。何 と言う素晴らしい眺めだろう。いつまでも飽きずに見ていたい眺めに、もうすっかり夢中だ。食事をしながら1時間ほど、この 眺めを楽しみ山頂をあとにした。 ![]() ![]() 桜坂の駐車場(下山時) スタート直後に天狗尾根と井戸尾根に分かれる ![]() ![]() 5合目あたりから展望が広がる 6合目展望台からの天狗岩とヌクビ沢 ![]() ![]() 順調に登り、7合目を通過 ドカーンと谷川岳が現れる ![]() ![]() 眼下には魚沼平野が広がる 残雪が山肌を斑模様に変える ![]() ![]() ニセ巻機山 残雪の上を歩いて行く人がいた ![]() ![]() ラストスパートに備えて避難小屋でひと休み 湿地帯の木道の先には割引岳 ![]() ![]() 3時間10分で巻機山に到着 武尊山の向こうには赤城山 ![]() まず目に飛び込んでくるのが、山頂の向こう側にある越後三山の眺め。左から八海山、越後駒ケ岳、中ノ岳 ![]() 大迫力の谷川連峰。隣奥には富士山が頭を出している ![]() 正面の苗場山の奥には噴煙を上げる浅間山。素晴らしい眺望が広がる <山行後記> 女性的な穏やかさを持った巻機山は、距離の割には標高差が1200m以上あり、終始 きつい上りが続いた。しかし、終わってみて何かあっけ無さを感じたのは、まったく足 に痛みが出なかったせいだろうか。登山道はしっかりとしており、危ないところはない。 山頂からの眺めは説明いらず、絶景の一語に尽きる。季節を変えて、もう一度訪れてみ たい山だった。 ![]() |
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