36鳳凰山


 日帰りでの三山縦走は歩きごたえ満点
ほうおうさん


(2840m)
                                                                            山梨県南アルプス市・韮崎市・北杜市


           オベリスク。天を突き刺すその尖塔は、この山を象徴するに相応しい
           存在である。地蔵岳、薬師岳、そして最高峰の観音岳を合わせて鳳凰
           山、または鳳凰三山という。南アルプスの中では赤石山脈の主脈から
           東にずれているため、前衛とも言うべき存在の山であり、そこからの
           主脈の眺望は素晴らしい。


 2007年7月6日    

 ・コース
  青木鉱泉⇒ドンドコ沢⇒鳳凰小屋⇒地蔵岳⇒
  観音岳⇒薬師岳⇒中道⇒青木鉱泉

 ・行き 7時間55分 、 帰り 3時間55分

 ・標高差 1733m 
          
 ・歩程 18.8km
  


今日のルートは青木鉱泉からドンドコ沢コースで地蔵岳まで一気に登り、観音岳への縦走、そこから薬師岳を経由して中道コー
スで青木鉱泉まで下山するという周回ルートだ。距離、標高差がかなりあり、通常は1泊して登るようだが、長丁場を覚悟で日
帰りでの山行に挑んだ。
深夜に青木鉱泉の駐車場に着くと、3時間ほどの睡眠補給のあと、4時40分過ぎに準備をし登山開始した。空は灰色の雲に覆
われており、雨が降らなければ良いのだが。青木鉱泉の横が登山道入口で、進んで行くとすぐに中道コースとドンドコ沢コース
の分岐にあたるので、ドンドコ沢へのコースをとった。堰堤工事をしている川に沿って行くと、登山道はすぐに樹林帯へと変わ
る。どこから現れたのか、野性の猿が数匹こちらの様子を窺っていた。鬱蒼とした林の中は高温多湿で早くも汗が吹き出てき
た。何度か沢を渡渉するたびに、沢水で顔を洗うとすっきりとした。辺りは南国っぽい雰囲気の林で、とにかく緑の密度が濃い
ところだ。それにしても毎回のことだが、初めからの急登は体が慣れていないためかなり堪える。1時間半ほど歩いたところで、
行く手に滝が現れた。このコースは登山道沿いに南精進ケ滝、鳳凰の滝、白糸の滝、五色の滝などが点在しており、これらをじ
っくり観賞するのも楽しいと思うのだが、今はとてもそんな余裕はない。しかし、疲れた身体で単調な歩きの最中では、ほっと
するものである。ひたすら登り続けると御座石鉱泉からのルートと合流し、すぐに鳳凰小屋へと到着した。歩き始めてからすで
に5時間、かなり疲れていたので、ここでしばらく休憩することにした。水場では冷たい水が豊富に溢れ出ており、その脇には
木製のデッキが設えていた。なかなか味のある山小屋で、その中では人の良さそうな主人がちょこんと座って茶をすすってい
た。この主人いわく、地蔵岳まではあと1時間もあれば着けるとのこと。先を急ぐのでそろそろ出発することにした。相変わら
ずの急登は尽きることがないが、30分ほどすると前方には空が開け、見上げるとそこに遂に地蔵岳のオベリスクが姿を現し
た。それは待ちに待った瞬間だった。しかし、ここからが大変で、白ザレの急斜面がずっと上まで続いていた。足の踏ん張りが
利かず、なかなか前へ進まない。まるで蟻地獄のようだ。休みながらゆっくりと登っていくとやがて地蔵岳の山頂に到着した。
山頂は一面白砂で覆われており、そこそこの広さがある。ここから見るオベリスクは何とも言えず素晴らしい。花崗岩が風化に
より、丸みを帯びた岩塔の姿はどこか機械的ですらありカッコイイ。今日は残念ながら曇空のため、期待していた南アルプスの
パノラマを楽しむことができない。かろうじて北岳の山影がうっすらと見て取れるくらいだ。まだまだ先が長いので、さっさと
食事を済ませると観音岳へと急ぐことにした。ここからは、いくつかのピークを越えていくのだが、アップダウンは見た目ほど
大したことはなかった。途中で野生のテンを見た。また、先ほどの鳳凰小屋ではオコジョも近くで見ることができた。オコジョ
に出会うと幸せになれると何かの本で見たことがあるが、まったく期待できそうもない。しかし、可愛らしい野生動物との出会
いに大感激である。歩き始めて約8時間で、最高峰の観音岳に到着した。こちらの山頂は狭い。地蔵岳のオベリスクが雲の間に
見え隠れしており、反対側にはこれから向かう薬師岳だ。とっくに体力はゼロ状態だが、先を急がなければならない。隣の薬師
岳にはすぐ到着した。長い帰路を前にしばしの休憩とした。下山した中道コースはとても長く感じた。行っても行っても果てし
なく続く道は、疲れきった体にかなり堪える。約12時間掛かり、ふらふらになりながら青木鉱泉に戻ることができた。


 
   登山口の青木鉱泉。帰りに入浴しようとしたが休館だった                 ドンドコ沢と中道に分岐する

 
      ドンドコ沢にはこのような滝が幾つも現れる                   御座石鉱泉からのルートと合流する

 
         やっとのことで鳳凰小屋に到着                        待望のオベリスクとご対面

 
       これを近くで見たかった。ナイスですねぇ                  曇ってきた。まだまだ先は長いので急ごう

 
      赤抜沢ノ頭を過ぎた付近からの観音岳の眺め         観音岳手前から地蔵岳を振り返る。再びオベリスクが顔を出す

 
     観音岳まであと少し。滑りやすい白砂の道を行く        7時間55分で観音岳に到着。山頂は狭いが誰もいなかった

 
       この稜線をさらに進むと薬師岳がある                           最後の薬師岳


     薬師岳から観音岳を眺める。晴れてくれれば。。。




        <山行後記>
          初めての南アルプスは日帰り山行のため、かなりしんどい思いをした。本来の楽しみ
          ながら登るというためには、やはりこういう山は無理せず一泊したほうがいいだろう。
          天気は今ひとつだったが、期待のオベリスクや様々な動植物を見ることができ、鳳凰
          山はとてもいい思い出の山となった。





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