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南アルプスの北部、北沢峠を挟んで仙丈ケ岳と対峙するのが甲斐駒ケ岳 だ。白く美しい花崗岩で覆われたピラミダルな山容は峻険でダイナミッ クであり、比較的なだらかな南アルプスの中では特異な雰囲気を放って いる。全国に数ある駒ケ岳の中でも、その高さ、風格において一番の山 であろう。
5時10分のバスに乗るために宿を出た。外は真っ暗で、ヘッドランプを点けて歩いて行くと、ちょうどバスがやって来たので まずはそれに乗って広河原まで、そこで乗り換えて北沢峠まで行った。ここまでは先月の仙丈ケ岳のときと同じだ。長衛荘で水 を汲んで早速歩き出した。天候は超快晴、青く晴れ渡たり、空の高さを感じる。足取りも軽やかだ。山梨県側に少し戻ると左へ 入っていく道があり、ここが登山口になる。数分行くと北沢長衛小屋に出た。その脇はテン場になっており、20張ほどが幕営 していた。夏の最盛期にはたくさんの色とりどりのテントの花が咲くことだろう。沢に沿って進んで行くと、20分で今度は仙 水小屋に出たが、すでに閉められておりひっそりとしていた。小屋の先からは大きな岩が積み重なった片斜面になった。足元は 安定しており、それほど歩き辛くはない。振り返ると木々の向こうに仙丈ケ岳が徐々にその姿を現してきた。これからの眺望に 期待が膨らむ。岩石帯を緩やかに登って行くと、やがて前方視界が開け、本日初めてのパノラマが展開した。ここは仙水峠だ。 見上げると大岩峰の摩利支天が迫り来るように聳えている様は、なかなかの迫力がある。小休止をして今後に備えよう。さて、 次に目指すのは駒津峰だ。ここからは標高差500mを登ることになる。今までと違い急登が続くきつい箇所だが、気温が低く 快適に歩くことができる。コメツガ、シラビソ林の中を軽快にぐんぐんと標高を稼いでいく。30分もすると林が開け、ここで 早くも駒ケ岳がその姿をさらけだした。摩利支天を従え、真っ白な山肌が青空にくっきりと映えていた。南東の方角には鳳凰山 だ。やはり地蔵ケ岳のオベリスクが印象的である。さらに30分登り詰めると駒津峰に出た。すでにここで最高の景色を得るこ とができた。仙丈ケ岳のカールは薄っすらと雪を纏っていて美しく、三角な北岳の峰はとても端整である。中央アルプスの先に は、1週間前に登った御嶽山の雪化粧だ。目の前には駒ケ岳が立ちはだかっており、かなり近づいて来た観がある。景色を楽し みながらの休憩後、再び歩き出した。少し雪の積もった岩場を一旦下り、その後は小ピークを幾つか越えることになる。この辺 りは狭い尾根状の道もあり、足元に注意が必要な箇所があった。大きな岩が折り重なった名物の六万石を通過すると、ルートは 2つに分かれた。頂上への直登ルートと巻道だが、ここは無理せず巻道を選択した。この先は花崗岩と白砂の連続する、山頂へ の最終アプローチとなる。この辺りが甲斐駒ケ岳を象徴する風景と言える。摩利支天への分岐を過ぎると、やがて山頂に到着し た。山頂ではたくさんの登山者が景色を楽しんでいた。その景色の素晴らしさと言ったら最高の一言に尽きる。北岳をはじめと する白根三山、塩見岳とその先へと続く南アの主脈の眺めが凄い。これは甲斐駒からでしか得られない眺めと言える。手前には 仙丈ケ岳のゆったりとした山体。鳳凰山の上には富士山が乗っている。反対側には八ケ岳連峰が手にとるように一望のもとだ。 木曽駒ケ岳、空木岳を擁する中央アルプス、その右に目を向けると御嶽山、乗鞍岳、槍穂へと続く北アルプスの銀屏風と、まさ に無敵のパノラマである。いつまでもここに留まっていたかったが、そろそろ山頂を後にしよう。 ![]() ![]() ![]() バスが到着した北沢峠 すぐに北沢長衛小屋にでる 幕場 ![]() ![]() 仙水小屋はすでに閉まっていた 岩が積み重なった斜面をしばらく進む ![]() ![]() 仙水峠に到着すると、頭上に摩利支天が聳え立つ 仙水峠からの急登を行くと、左手に白根三山が現れる ![]() ![]() 駒津峰に上がると展望が一気に開ける すぐそこには駒ケ岳が大迫力で迫る ![]() ![]() 後ろには仙丈ケ岳。薮沢と尾根のコースがよく分かる 駒津峰からはいったん下って、ヤセ尾根を渡る ![]() ![]() 六万石を過ぎ、巻道を進む 摩利支天への分岐 ![]() ![]() 白ザレの斜面の先に山頂が見えてきた 3時間20分で甲斐駒ケ岳に到着 ![]() 王者の風格漂う北岳から、間ノ岳、悪沢岳、荒川中岳、さらに塩見岳へと続くパノラマ。甲斐駒からならではの最高な眺め ![]() ![]() 鳳凰山の上に富士山が乗っている 北西には鋸岳が鎮座している ![]() ![]() 中央アルプスの向こうには御嶽山 すっかり雪化粧の北アルプス ![]() ![]() 八ケ岳はすべて見える おおらかに広がる仙丈ケ岳 ![]() ![]() 摩利支天も上から見ればただの岩山 下山途中の甲斐駒。ハイマツの緑と花崗岩の白が青空に映える <山行後記> 仙水峠から駒津峰までは少々きつかったが、上がってしまえばそこからは景色を楽し みながら歩くことが出来た。山頂へと至る道程には変化があり、飽きることがない。 天候にも恵まれ、これ以上ない展望には心躍るものがあった。シーズン終盤に最高に 素晴らしい一日を過ごすことが出来た。 頑張って登った2007年 今回の甲斐駒ケ岳で今年の山行も終わりとする。今年は個人的な事情により時間があ ったため、出来るだけ多くの山に行きたかった。ひと月に6〜7座を目標にしてきた ところ、49座を登ることが出来た。昨年から引き続き、しばらくは苦しい思いをし ながら歩くことが多かった。毎回、なぜこんなに苦しい思いをして登らなければなら ないのかと。しかし、それも最近になってようやく慣れてきたようで、歩くことが楽 しくなってきたような気がする。 ![]() |
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