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中央アルプスのほぼ中央に位置するのが空木岳だ。その響きの良い美しい 山名を持つ山は、中アにおいてひときわ端整な姿を見せる。山頂部の花崗 岩からなる奇岩とハイマツのコントラストが見事で、また、空木平のカー ル一帯は花咲く楽園となっている。
睡魔に負けてしまい、何度も休憩しながらやっと駒ヶ根までやって来た。登山口は池山林道の終点になるが、この林道の最後の 数kmはかなり路面状態が悪かった。1時間半ほど仮眠できるはずだったのだが、とても寒かったのでほとんど眠れず、5時過 ぎに歩き出した。まずは池山自然遊歩道となっている道を歩いて行く。密度の濃い森の中は薄暗く、熱帯っぽいシダまで生茂っ ており蒸し暑く、早くも汗が吹き出てきた。30分で旧池山小屋への分岐だ。そちらには水場があるようだがパスして先へ進 む。緩やかな登山道はしっかりとしており歩きやすく、順調に距離を伸ばしていく。池山小屋の水場に着くと二人の登山者が休 憩していたので、こちらも一息つくことにした。ここは池山と空木岳の分岐点となる。くりぬかれた木桶に勢いよく注がれてい る水は美味しく、この水で水筒を満たし再び歩き出した。次第に道は斜度を増してくる。むせぶような森の中ではシラビソやコ メツガといった木立の眺めが素晴らしく、足元にはギンリョウソウが群生している。水場から1時間ほどすると右側の視界が開 け、千畳敷と宝剣岳が姿を現した。少し雲が浮かんでいるが青空が広がっており、今後の展望が楽しみだ。しばらく行くと小地 獄、大地獄という何やら物騒な所に出た。この辺りから登山道の状況がかなり怪しくなってきた。足場の悪い所には木製や金属 製の梯子が架けられており、これらを慎重に越えて行かなければならない。すぐに迷尾根というまたまた怪しげな所に出た。 次々に梯子や鎖場が現れ、さながら何かのアスレチックかアトラクションのようだ。ヤセ尾根に差し掛かったころには、これま での疲れと睡魔によって歩が進まなくなった。足を踏み外せば尾根から滑落してしまう危険を感じたので、腰をおろしてほんの 数分だが目を閉じて休憩することにした。再び歩き出し、また休憩を何度か繰り返して避難小屋との分岐にたどり着いた。ここ までで4時間を越えており、行程の長さが感じられる。避難小屋へは一旦下りになるが、そちらには向かわず斜面を登るとすぐ に池山尾根の上部へと至る。森林限界を越え、視界が開けると行く手に遂に空木岳の山頂を望むことが出来た。やっとここまで 来たという感じだ。すでに体力を使い果たしてしまい、目の前の山頂まであとどれぐらいでたどり着けるのやら。右手後方には 千畳敷と宝剣岳が雲の隙間から見え隠れしている。ここからはさらにゆっくり行くことにした。まずは、緩やかに登って行くと そこには駒石が鎮座しており、間近で見るとその大きさに圧倒される。以前登った金峰山の五丈岩に似ており、また、その先に は瑞牆山の大ヤスリ岩に似た岩も見られた。辺り一帯は花崗岩の奇岩が点在しており、これらの眺めも楽しみの一つだろうが、 今はそんな余裕はない。ハイマツ帯の中、岩間を縫って2つほどのピークを越えると駒峰ヒュッテに着いた。このヒュッテには 景色を堪能するのにうってつけの展望ベランダが設置されている。ここから残り100mの急登となる。空木平避難小屋から合 流すると、山頂を目指してゆっくりゆっくり登って行く。そして最後の力を振り絞ってやっと空木岳山頂に到着した。誰も居ら ず静かな山頂で呼吸を整えながら周りの景色を眺めた。北アルプスと南アルプスは残念ながら雲の中だが、北側の檜尾岳から宝 剣岳へと続く主脈縦走路はかろうじて見ることが出来た。反対側には南駒ケ岳だ。眼下に目を向けると登ってきた池山尾根と空 木平のカールが展開していた。さて、帰りも長く険しい道のりが待っているので早めに下山することにしよう。 ![]() ![]() ![]() 夜明けが来たので歩き始める 池山小屋の水場で給水タイム しばらくは樹林帯が続く ![]() ![]() マセナギ?とはいったい何ぞや 宝剣岳と千畳敷が見えてきた ![]() ![]() この辺りから道の具合が怪しくなってくる 心許ない橋や梯子が連続する ![]() ![]() やたらと物騒な地名が続く 迷尾根の前後には梯子や鎖場が次々と現れる ![]() ![]() 4時間を過ぎたころようやく避難小屋分岐に到着 待ちに待った山頂だがまだまだ遥か先だ ![]() ![]() ハイマツ帯の中には所どころに残雪がある 有名な駒石は近づいてみるとデカイ ![]() ![]() 尾根左手の空木平にある避難小屋 快適な稜線が続くがすでにバテバテ状態 ![]() ![]() 檜尾岳から宝剣岳への眺め。雲が流れてきたので急ぐ 駒峰ヒュッテまで来ればもうすぐだ ![]() ![]() 最後の100m。これがやたらと長く感じる 5時間50分、バテバテになりながら空木岳に到着 ![]() ![]() やってきた道を見下ろす。右側にはカールが展開する 雲にすっかり隠れてしまい、いま一つの眺め <山行後記> 長い。あまりにも長いうえに標高差1500mはかなり堪えた。さらに今回は体調が 良くなかったせいで、戻って来るまでに10時間を越えてしまった。しかし、日帰り はきびしい山と聞いていたが行けないことはないと感じた。苦労して登ったのだから それなりの眺望を期待していたが残念だった。 ![]() |
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