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北海に浮かぶ夢の浮島、利尻島。その中心に位置するのが利尻山である。 急峻で鋭い岩稜を形成する山頂部から海に向かって綺麗に裾野を引き、島 全体を包み込むように聳え立っている。利尻富士とも言われ、春から夏に かけてはたくさんの花々が咲き競うその姿は、まさに最果ての秀峰と呼ぶ に相応しい。
以前から楽しみにしていた利尻島に行くときがきた。せっかくの利尻島なのでもう少しゆっくりしたかったが、2日間だけしか 日程がとれず、贅沢だがすべて飛行機を使っての弾丸ツアーとなってしまった。 昨日、利尻空港に降り立ったときは島全体が低い雲に覆われており、利尻山は姿を隠してしまっていた。今日はいい天気になれ ば良いのだが、予報ではあまり期待できそうもなかった。登山コースは鴛泊からだ。朝4時に宿の車で登山口の北麓野営場に送 ってもらうと、準備を済ませ早速歩き出した。まだ日が昇ってないが、すでに雲が広がり薄暗い。10分も歩くと甘露泉水に着 いた。ここの水は名前の通り甘くてとても美味い。これより先に水場は無く、水筒を満たすと先を急ぐことにした。甘露泉水の ある3合目から4合目過ぎまでは、道幅もあり歩きやすい。エゾマツやトドマツの森の中では、あちこちから鳥のさえずりが絶 え間なく聞こえてくる。そんな中、相変わらずの曇り空だが、気分良く歩いて行くと5合目に出た。この先から道は狭くなり、 斜度を増したジグザグ登りになった。振り返ると遠くに鴛泊の町が眺められ、海岸線からは思いのほか近いことが感じられる。 その海だが、この空模様のため青さを失い、灰色に映っていた。ダケカンバの林から潅木帯に変わると6合目に達し、前方の視 界が開け、そこには利尻山の北西部斜面の広がりが現れた。ここまで少し急いで登ってきたので小休止をすることにした。すぐ 後から登山者がやって来ると先へ進んで行ってしまった。毎度のことながら歩き出しはペースが速いが、しばらくするとへばっ てしまい、他の登山者に抜かれてしまう。再び歩き始め、さらに高度を増していく。登山道は大きな岩が続き、傾斜もきつくな ってきた。すぐに息が上がり、休み休みのペースで進むと8合目の長官山に着いた。ここでようやく利尻山がその全貌をあらわ にした。昨日、島にやって来てから初めて目にした利尻山は、とても秀麗でまるで絵にかいた様に素晴らしい眺めだ。頂上一帯 の空には青空が広がっているが、麓から雲が上がってきているのが気にかかる。現在の標高は1200m、まだ500m登らね ばならない。利尻山を見ながら一旦下ると避難小屋があり、その脇には携帯トイレ用ブースが設置されている。かなり疲れを感 じてきているが急ぐことにした。先ほど一瞬覗かせた青空もすっかり雲に隠れ、おまけに風まで吹いてきた。ここから先は様々 な高山植物が迎えてくれた。リシリヒナゲシ、エゾカワラナデシコ、チシマフウロ、イブキトラノオ、イワベンケイ、チシマキ ンバイなど次々に現れる色とりどりの花々は見ていて飽きることがない。花を見ながらゆっくり登って行くと、やっとのことで 9合目に到着した。山頂まではあと50分だ。先ほどから霧が立ち込め、風も吹いてきたため、だいぶ寒くなってきたので上着 を一枚着ることにした。一息ついたあと先へ進むと道はザレはじめ、かなり歩き辛くなってきた。アリ地獄のようでまったく踏 ん張りが効かない。しかも風がかなり強く、吹き飛ばされないようにしなければならない。このあと尾根がやせてくると沓形コ ースとの合流点だ。この付近では右側の斜面の崩落が進んでいることが分かる。足を滑らさないように注意が必要だ。そしてロ ープに掴まり、最後の急登をひと頑張りすると山頂の北峰に到着した。最高点の南峰へは道が崩落しているため進入禁止となっ ている。視界が悪いため高度感はまったくなく眺望ゼロだ。本来なら山頂からは360゜の眺めで、お隣の礼文島や稚内が一望 のもとなのだが残念だ。雲の下からはフェリーの汽笛が聞こえてきた。これ以上天候が悪化する前に下山し、温泉にでも入りに 行こう。 ![]() ![]() ![]() 空港から鴛泊までのんびり歩く 高台に上りペシ岬を望む 夕食前に鴛泊港を散策 ![]() ![]() 4時15分、北麓野営場から出発 すぐに甘露泉水にでるので給水する ![]() ![]() ポン山、姫沼との分岐 雲が垂れこめているが何とか海が見える ![]() ![]() 6合目を通過。一面にハイマツが広がる 長官山まではもう少し ![]() ![]() 尾根道を振り返る。数人が登って来る 8合目の長官山に着くと、利尻山が現れた ![]() ![]() ようやく見ることができた利尻山 避難小屋へいったん下り、最後の登りになる ![]() ![]() 9合目からの登りは正念場 崩落した箇所を過ぎると山頂は近い ![]() 4時間40分で利尻山北峰に到着。眺望ゼロ 携帯トイレ 利尻山では携帯トイレを使う。鴛泊コースには3か所のトイレブースがあり、便座に携帯 トイレをセットして使う。使用済みのものは登山口にある専用の回収箱に入れる。携帯ト イレは宿で販売している。 ちなみに筆者は使用しなかった。 崩落する登山道 9合目から先の登山道は崩落が激しく注意が必要だ。土嚢が敷かれ崩れるのを防いでいる が、それでも崩落が進んでいる。ストックにはキャップをつけ、土壌を掘り起こさないよ うに。 お宿マルゼン 今回お世話になった宿。登山口への送迎は利尻で一番早く、下山時も連絡すれば迎えに来 てくれる。料理は北海タコしゃぶ、エゾバフンウニ、ホッケ開き、ソイ刺し、カニなどが 食卓に並び満足。食後は利尻富士温泉に送迎してくれる。宿の情報はこちら。 【 利尻で出会った花たち 】 ![]() ![]() ![]() ゲンノショウコ エゾカワラナデシコ ハマナス ![]() ![]() ![]() カンチコウゾリナ エゾノコギリソウ エゾカンゾウ ![]() ![]() ![]() イワオトギリ ゴゼンタチバナ イワギキョウ ![]() ![]() ![]() ミソガワソウ エゾツツジ リシリヒナゲシ ![]() ![]() ![]() ミヤマアズマギク イブキトラノオ チシマフウロ ![]() ![]() ![]() ボタンキンバイ イワベンケイ シコタンソウ ![]() ヨツバシオガマ いま一つの天候が続く 今年に入って5回目の山行だが、そのすべてで悪天候が続いた。いずれも景色が楽しみ な山だっただけに残念である。今後のスカッとする天気に期待したいところだ。 <山行後記> 天候不良は残念だったが、往路の長官山から利尻山の姿を望めたのは幸いだった。 9合目から先は登山道の状態が良くないので要注意だ。これ以上は登山道の崩壊 が進まなければよいのだが。この時期は花が見られるだけでも十分価値があり、 念願だった利尻山はとてもいい思い出となった。機会があれば次回は、島内観光 でもじっくりしてみたい。 ![]() |
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