72常念岳


 常念乗越に現れる槍の穂先はドラマチック
じょうねんだけ


(2857m)
                                                                                    長野県松本市・安曇野市


         安曇野から西の方角に目を向けると穂高連山や槍ケ岳の眺めを遮るように
         そこには常念山脈が横たわっている。その中でひときわ秀麗な山体を見せ
         ているのが主峰の常念岳で、安曇野のシンボルと言える山である。山頂か
         らの槍穂高のパノラマも素晴らしいが、麓から見るこの山の姿がまたいい。


 2008年9月15日    

 ・コース
  一の沢林道終点⇔最後の水場⇔常念小屋⇔
  常念岳

 ・行き 5時間15分 、 帰り 3時間20分

 ・標高差 1597m
          
 ・歩程 14.0km
  


夜中に一ノ沢の駐車場に到着した。登山口手前の路肩スペースに車を置き、いつものように明るくなるまで仮眠をすることにし
た。アラームの音で目を覚まし、準備を済ますと5時40分に駐車場をあとにした。数分行くと登山口の脇に登山補導所があ
り、そこで登山届けを出しいよいよ常念岳へのスタートだ。山頂までは1500m以上の登りだが、まずは常念小屋を目指す。
天気もまずまずで、一ノ沢に沿って明るい登山道を登って行く。気持ちの良い樹林帯が続く中、山の神、古池、大滝ベンチと順
調に距離を延ばす。前からは下山してくる人が次々とやって来る。道は良く整備され危険はないが、渡渉箇所や段差には頼り無
げな渡し木や梯子が架けられている。ナナカマド、ダケカンバといった樹々の間からは山頂へと続く尾根が見えてきた。山頂は
その向こうに隠れてまだ見えないようだ。胸突八丁を過ぎるとこれまでよりきつい登りとなった。歩き始めて2時間40分を過
ぎた頃、最後の水場に着いた。この山は水筒いらずの山と言われるほど水源に恵まれているらしいが、水場らしいところはここ
が初めてだった。とりあえず水筒を満たし、休憩することにした。コンビニで買ったおにぎりを食べ終えると再び歩き出した。
振り返るとここまで登ってきた一ノ沢が眺められ、随分高度を上げてきたことが分かるが、下から雲が広がってきているのが気
になる。第3ベンチを通過する頃には道は九十九折れの急登になった。左手には山頂へと続く斜面がすぐ近くに現れた。間もな
く常念乗越だろう。この急登を乗り詰めると、その先にまず目に入ってきたのは槍ケ岳の穂先で、さらに穂高岳への稜線だっ
た。ここまでひたすら樹林帯を登ってきたため、尾根に乗った瞬間現れたこのパノラマはなんともドラマチックで感動的な一瞬
で、しばらく見入ってしまう光景だった。常念小屋の真っ赤な屋根が周りの緑によく映え、その向こうには槍穂がある。小屋の
周りはなかなか雰囲気が良く静かだったので、ここで休憩をしたいところだが、とにかく先を急ぐことにしよう。まだ400m
登らなければならない。始めは小石混じりの道をまっすぐに進んで行く。よく見るとハイマツ帯の中にブルーベリーの木があっ
て実をつけていた。試しに一つ食べてみたところ、甘酸っぱくてなかなか美味しかったのでたくさん摘んで食べながら歩くこと
にした。次第に勾配がきつくなり前常念岳への分岐を過ぎると、この先からは大きな岩が連なる斜面が続く。息苦しくなり立ち
休みを何度かしながらゆっくりと登って行く。すぐ目の前にあったピークが山頂だと思っていたが、これは八合目でさらにその
先に山頂があった。がっかりだ。振り返ると眼下には常念小屋があり、向こうの尾根は横通岳へと延びている。頭の上にはホシ
ガラスがさかんに飛びまわっている。右手に見える景色を眺めながら最後の斜面を登りきると、ようやく常念岳の頂上に到着し
た。下の小屋からは予定以上に時間が掛かってしまった。曇っているが、ぐるり360度の展望で槍穂高をはじめとする北アル
プス核心部の眺めが素晴らしい。大キレットの向こうには白山が顔を覗かせている。反対側の尾根は蝶ケ岳へと気持ち良さそう
な道が延びている。その下には上高地へと続く梓川の流れが俯瞰できる。しばらくこのパノラマを堪能し、山頂をあとにした。
一旦、常念小屋に下りここで槍をつまみに缶ビールを楽しんだ。やはりこのひと時が最高だ。同じ道を戻り、9時間掛かって常
念岳を終えることができた。


  
         一の沢林道の終点               右の建物が登山補導所            山の神とはいったいなんぞや
                                 ここから常念岳を見ることができた
  
       ただのちっぽけな水たまり           ベンチなんて無かったような             何度か渡渉を繰り返す

 
     次第に展望がひらけてきた。前からは下山者がやってくる     この涸れ沢は山頂までまっすぐ延びるが、進入禁止となっていた

 
              最後の水場で軽い食事をとる                     左手には常念岳がバッチリ見えてきた

 
      まもなく尾根に乗る。いつもこの瞬間がワクワクする           常念乗越に上がると初めに現れるのが槍の穂先だ

 
   小屋の周辺はとても良いところで、一度泊まってみたいと思った                    常念小屋

 
           正面は山頂ではなく、その先にある                        小屋の向こうには横通岳

 
  途中から岩場になる。小屋からのコースタイムをすでに過ぎている       ヘロヘロになりながら5時間15分で常念岳に到着

 
       常念岳からさらに進むと蝶槍から蝶ケ岳に至る                 ここから見る槍のトガリ具合がいい
        梓川、乗鞍岳、その先に御嶽山も確認できる                    槍沢の急登ぶりがよく分かる

               穂高連峰の中核部。右から北穂高岳、涸沢岳、奥穂高岳、吊尾根を挟んで前穂高岳と続く
          涸沢の小屋からザイテングラードを突き上げると白出コルの穂高岳山荘へと至る。ここを登るのだから凄い

     槍ケ岳から奥穂高岳。大キレットの向こうには白山まで顔を出している。まさに圧巻のパノラマだ。ここをいつか歩いてみたい

 
         横通岳とその左は燕岳、奥には針ノ木岳              大天井岳と東天井岳、奥には水晶岳から野口五郎岳




        <山行後記>
          尾根に乗るまではひたすら樹林帯が続くが、明るく歩きやすい道なのでそれほど苦に
          ならない。山頂からの眺めは文句なしだ。また常念乗越は雰囲気が良く、ここを中心
          にして燕岳や蝶ケ岳へも縦走してみたいものだ。以前から気になっていた常念岳は満
          足いく山行となった。





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