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個性的な峰々が連なる後立山連峰。その中でとりわけ美しい双耳峰を持つ のが鹿島槍ケ岳だ。左右には爺ケ岳と五竜岳を従え、山頂へと至る尾根か らは剱、立山連峰をはじめとする素晴らしいパノラマを満喫することが出 来る。展望と山容に優れたこの山は、後立山の盟主に相応しい。
この時期の車中泊はさすがに寒い。数時間の睡眠も寒さで目が覚めた。扇沢の駐車場を後にし、来た道を数分戻り緑色の橋を渡 ったところが扇沢出合で、この脇に爺ケ岳登山口がある。登山届けを提出し、7時10分過ぎに歩き出した。まずは樹林帯の登 山道をジグザグに登って行く。ダケカンバ、ナナカマドなどの木々の中は明るく、ほどなく行くと左側の見通しが利くようにな り、赤沢岳や針ノ木岳を常に見ながら歩くことが出来る。もみじ坂を過ぎると、見ごろをむかえた紅葉が斜面を染めているのが 目に飛び込んできた。扇沢の駐車場もみるみる小さくなり、かなり高度を上げてきたことが分かる。一時間近く歩いたところで ケルンの建つ場所に出た。ここで行く手の尾根に小さく種池山荘が見えた。晴れ渡った青空に真っ赤な屋根が映えている。まだ 距離がありそうだ。休まずに先を急ごう。ここの登山道は良く整備されており、とても歩きやすいため、どんどん距離を稼いで いく。石畳、石ベンチを過ぎると道は細くなり、左へ大きくカーブしているガラ場へとさしかかった。一人分の幅しかないが、 距離も短いので慎重に行けば問題なしだ。その後はややきつい登りがしばらく続くが、これを越えるとやがて種池山荘に到着し た。この種池山荘までの柏原新道は地形をうまく生かした実に快適な登山道で、1300mの標高を2時間半で登りきることが 出来た。山荘の前では多くの登山者が休憩していた。ここまでほとんど歩きっ放しだったので休憩することにした。さて、ひと 休みしたのでそろそろ出発しよう。ハイマツの中を真っ直ぐに延びる尾根は爺ケ岳へと続いており、歩き始めるとすぐ背後に立 山と剱岳の絶景が現れた。今回の山歩きを象徴する素晴らしい眺めがここから展開する。左手には目指す鹿島槍ケ岳の秀麗なる 双耳峰が横たわっている。種池山荘から40分で爺ケ岳南峰に到着した。ここからも最高の眺めだ。遠くの雲に浮かぶ南アルプ スと富士山、そして槍ケ岳と穂高岳、なんと言っても立山と剱岳、鹿島槍ケ岳のどっしりとした山容が凄い。今日泊まる冷池山 荘が尾根の上に引っかかるように建っている。一旦下ると爺ケ岳中峰へと向かう分岐にあたるが、ここは巻いて進むことにし た。緩やかなアップダウンを繰り返すと、その後は冷乗越へとガレ道をジグザグに下って行く。赤岩尾根コースの分岐点にあた る冷乗越を過ぎると再び上りとなり、やがて冷池山荘に到着した。丁度お昼の時間なので昼食にすることにした。さて、最後は 鹿島槍ケ岳へのアタックだ。ザックを置いて山荘脇の斜面を登ると、すぐ幕場に出た。この辺りは夏にお花畑に変わるようで、 そんな季節にも歩いてみたいものだ。ハイマツの中を縫って行くと、道は次第に急になる。ここが一番きついところだろうか。 山荘から40分ちょっとで布引岳のピークに出た。あと残り200m登らねばならない。ザレ状の稜線をゆっくり歩いて行く と、やがて鹿島槍ケ岳南峰に到着した。ぐるり360度の展望はどの方角を見ても折り紙付きだ。この先のヤセ尾根を下ると北 峰に行くことが出来る。さらに、キレットを越えた先には五竜岳があり、白馬岳や白馬鑓ケ岳まで遠望することが出来た。いず れは登ってみたい山ばかりだ。ひとしきり眺望を楽しんだので、そろそろ冷池山荘へ戻ることにしよう。夕食までのひと時は、 山荘前のテラスに出てみることにした。夕日に染まる鹿島槍ケ岳や北信五岳は美しい。このようなゆったりした時間を過ごせる のは山小屋泊まりならではだ。この冷池山荘は綺麗で食事もまあまあで、とても快適なところだ。二日目は6時40分に出発し た。天気は上々。昨日の道を戻り、今度は爺ケ岳中峰に寄ってみた。ここからも相変わらず良い眺めだ。爺南峰はパスして種池 山荘には8時30分に到着した。そして立山、剱に別れを告げ、あとは登山口に下りるのみとなった。10時10分、予定より 早く扇沢に戻ることが出来たので、後は温泉にでも入って疲れを癒すとしよう。 ![]() ![]() ![]() 扇沢出合 登山口 扇沢の駐車場がだいぶ小さくなってきた ![]() ![]() ![]() 尾根の上に種池山荘が見えてきた 針ノ木岳、蓮華岳 歩き易い柏原新道で尾根を目指す ![]() ![]() ![]() ガラ場は慎重に通過する 2時間30分で種池山荘に到着 富士山が頭を出している ![]() ![]() 種池山荘を出ると、後ろには立山と剱岳が現れる 次に目指すのは爺ケ岳だ ![]() ![]() 左手には鹿島槍ケ岳が見えてきた 種池山荘から40分で爺ケ岳南峰に到着 ![]() ![]() 槍ケ岳を遠望 ここから見ると立山から剱岳への連なりがよく分かる ![]() 今回の主役の鹿島槍ケ岳。手前が南峰で奥が北峰。今夜の宿、冷池山荘が鞍部に建っている ![]() ![]() 種池山荘から爺ケ岳南峰までを振り返る 前方には爺ケ岳の中峰と北峰 ![]() ![]() 迫力の剱岳。早くこの山も登ってみたい もうすぐで冷池山荘だ ![]() ![]() 冷池山荘に着いたので宿泊予約と昼食タイムだ 山頂へと出発する。後ろには爺ケ岳の三峰が並ぶ 古ぼけて見えるが、中はとても綺麗で快適です ![]() ![]() 布引山で小休止。ここの登りが今日一番のきつさだった 山頂手前の斜面は息を整えながらゆっくりと ![]() ![]() 鹿島槍ケ岳に到着。どこを向いても絶景だ 五竜岳から白馬岳への稜線 ![]() ![]() 立山、剱岳は常に見えるが、少しずつ角度が変わる 夕食前にのんびりする。北信五岳のシルエット ![]() ![]() 夕日に染まる鹿島槍ケ岳 2日目の帰りは爺ケ岳中峰に寄ってみた ![]() ![]() 種池山荘下の斜面に雷鳥がいた 冷池山荘 外からは少しばかり古ぼけて見えたが、中はとても綺麗な山小屋だった。3連休と いうこともあり大混雑を予想していたが、着いた時間が早かったせいか、大部屋の 2階部分のロフトっぽいスペースを割り当てられた。これがちょっとした個室とい った感じで実に快適であった。他の部屋はいっぱいいっぱいの状態だったし、さら に乾燥室や談話室まで人があふれていた。 <山行後記> 柏原新道の歩きやすさは特筆もので、さらに鹿島槍ケ岳に至る稜線も危険な箇所が なく気軽に北アルプスを満喫できるだろう。また、尾根歩きではピークを越えるた びに様々な景色が現れるので飽きることがない。青空の下、胸のすくような大展望 と快適な稜線歩きなど、後立山の醍醐味を存分に楽しむことが出来た。 ![]() |
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