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信越国境に位置する高妻山は標高2353m、戸隠連峰の最高峰である。 戸隠山からは、鋭く立ちあがった綺麗な三角錐の姿を見ることができる。 一不動から山頂までには幾つもの祠や石仏が見られ、修験道の山として 当時が偲ばれる。
6月だと言うのに高原の朝はまだ気温が低い。戸隠牧場の駐車場に停めた車から外に出ると、ひんやりとした空気に包まれた。 牧場事務所に届を出すと、5時過ぎに高妻山目指して出発した。辺りは朝靄に包まれているが、上空には青空が広がりつつあ る。牧場の先へと進んで行くと、正面には九頭龍山が立ちはだかるように聳えていた。すぐに牛止めの柵があるので、これを越 えるといよいよ登山道の始まりとなる。緩い勾配の道で体を慣らしていくと大洞沢に出た。この沢を何度か渡渉するのだが、穴 のあいた靴ではかなり気を使う。徐々に登りがきつくなり、体が温まってきたので上着を脱ぐことにした。50分歩くと滑滝に 突き当たった。落差10mほどで、思ったほど水量は多くない。横に鎖が掛けられているが、これにつかまることなく楽に越え ることができた。さらに進んで行くと、目の前に垂直に近い一枚岩の斜面が現れた。帯岩だ。幅30cmほどだが、しっかりと したステップが切られており、鎖も渡されている。バランスを取りながら慎重に通ればなんのことはない。しかし、足元が濡れ ており、足を滑らせれば只では済まないだろう。沢の水もだいぶ少なくなると、やがて氷清水に出たので小休止だ。沢が完全に 涸れるとすぐに一不動避難小屋に到着した。先を急ぐ。登山道はシラネアオイの群生で彩られ、ついつい歩が緩んでしまう。こ れほどのシラネアオイを見たのは初めてだ。尾根の道をアップダウンを繰り返しながら進んで行くと、目の前には五地蔵岳が立 ちはだかっていた。この山を越えるだけでもかなりきつそうだ。歩き始めてから2時間35分で五地蔵岳に到着した。すでにか なりの体力を消耗した観がある。あとから来た登山者と休憩することにした。南側には雲の上に飯縄山がのっぺりと横たわって いる。行く手には目指す高妻山が全容を現した。それは青空のもとに聳え、なんとも綺麗な山容だ。まだまだ距離があるので、 あまりのんびりもしていられない。この後も再び上り下りのつらい道が続いた。シラビソ、コメツガ、ダケカンバなどの木々の 間からは、尾根伝いに戸隠山が見える。八丁ダルミを過ぎ、やっとのことで九勢至までたどり着いた。ここから見ると、高妻山 への斜度の凄さが分かる。とっくに体力ゼロであるが、最後の登りにとりかかるとしよう。急登をひたすら進んで行くと、残雪 帯に出た。距離は100mほどだが、急斜面のくされ雪はかなり歩き辛い。ところどころ雪が割れ、踏み貫いた跡も見られる。 これ以上体力を使いたくないので注意して歩かねばならない。残雪が終わり、急登を登り詰めると斜度が緩くなり岩場の道へと 変わった。ここを慎重に過ぎると、やがて高妻山の頂上に達した。戸隠牧場から4時間45分と、思いのほか時間がかかってし まった。頂上では雲が広がってしまい、周囲の山々の眺め、とくに北アルプスのパノラマは得られないが、やっとのことで登頂 できたので満足だ。ゆっくりと休んでいたかったのだが、狭い山頂に下から数人のパーティがやって来るところだ。仕方なくこ の場を空け渡すことにした。 ![]() ![]() 早速歩きだすが、まだ靄っている 目の前には九頭龍山が立ちはだかる ![]() ![]() 滑滝はあまり水量が多くなかったので鎖は不要だった 帯岩を慎重に越えていく。足を滑らせればただでは済まない ![]() ![]() 氷清水で小休止。冷たい水が心地よい 一不動避難小屋から尾根道が始まる ![]() ![]() 飯縄山は雲に隠れて全容を見せない 五地蔵山か。これを登るだけでも大変だ ![]() ![]() こちらは戸隠山へと続く尾根 五地蔵山に到着したので小休止しよう ![]() ![]() 目指す高妻山だ。山頂直下の急斜面が凄そう 八丁ダルミを終え、ようやく九勢至までやってきた ![]() ![]() 急登の途中で振り返る。ここの残雪帯は厄介だった 4時間45分で高妻山に到着。かなり疲れた ![]() ![]() 戸隠牧場に帰還。下りでも4時間近くかかってしまった 腹ペコだったので、牧場入口にある蕎麦屋で食事 普通のざるそばを注文したらいろいろ付いてきた ![]() ![]() ![]() <山行後記> うわさ通りのいやらしい山だった。とくに一不動から山頂直下までの登り下りの連続 には堪えた。それ以外は変化があり、尾根筋の道は天気に恵まれれば最高のトレイル ルートになるだろう。また、登山道に咲いているシラネアオイの群落は素晴らしく、 これを見るだけでも高妻山に来る価値は十分にある。 ![]() |
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