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新潟と山形の県境におおらかで重厚な峰々を連ねているのが朝日連峰である。その中 の盟主である大朝日岳、そして西朝日岳から以東岳に至る主稜線は朝日連峰を代表す るものだ。アプローチこそ大変だが、そこからの素晴らしい景観と登山道を彩る豊富 な高山植物、またブナの原生林など、この山域ならではの見どころは多い。
7月の3連休は今年初の本格的な山行で東北の朝日岳にした。半月ほど前から行く機会を窺っていたのだが、週末の天候は2週 続けて良くなかった。何といってもヒメサユリが楽しみな山だけに、もう少し早く行きたかったのだが仕方がない。この週末は ついに関東地方は梅雨が明け、朝日岳もまずまずの天気のようだ。昨日は古寺鉱泉の駐車場で車中泊したが、予想外の寒さでほ とんど眠れないまま朝を迎えた。周りが騒がしくなってきたので、こちらも装備を整え5時過ぎに歩きだした。駐車場の奥に続 く細い道を沢に沿って進むと、古寺鉱泉の朝陽館にでた。とても古びた、秘湯の風情満点の宿だ。宿の横をすり抜けると登山道 の始まりとなる。森の中を急な斜面が延々と続いており、のっけから重労働となった。風の通らない森の中では、いつものよう に大汗をかきながら登っていく。出発してから1時間15分で一服清水にでた。汗をかき、のどが渇いていたので丁度良かっ た。ここでは水だけ飲んで、先を急ぐことにした。その後も、相変わらずの急登をもくもくとこなす。数組のグループにつかま るが、道を譲られるので先へ立たねばならない。先ほどの水場から40分で第二の水場、三沢清水にでた。上の斜面からホース を伝わって、水が勢いよく流れ出ている。さらに先へ進む。もうとっくに尾根に出てもおかしくない時間だと思うのだが、まだ この登りは続きそうだ。しばらく我慢して歩くと、道の脇にヒメサユリが現れはじめた。やはり盛りは過ぎているようで、少し 鮮やかさに欠けており、枯れはじめているものも目に着いたが、咲いているのが見れただけでも満足だ。ヒメサユリを通り過ぎ るとほどなく古寺山に到着した。ここでようやく眺望を得ることができた。古寺山から続く稜線は小朝日岳、大朝日岳、中岳、 そして西朝日岳だ。大朝日岳の肩に建つ避難小屋もよく見える。残雪を纏った朝日連山の主役たちの眺めが素晴らしい。ここま で歩きっぱなしだったので、荷物を降ろして本格休憩することにした。目指す大朝日岳まではだいぶ距離がある。ひと息ついた ところで歩き始めた。古寺山をいったん下り、小さな雪渓を越えて行くと、やがて分岐となった。直進すると小朝日岳で、右に 進めばその巻道になる。小朝日岳へはそれほど登るわけでもないが、これ以上余計な体力は使いたくないので巻道を行くことに した。距離はないが、数10メートルは下っただろうか。小朝日岳からの道と合流し、熊越の鞍部から登り返すと、ここからは 展望に恵まれた尾根歩きとなる。このあたりから避難小屋手前の斜面までは、ほとんど高度変化はなく、今回のルートで最も気 持ちよく歩けるところだろう。右手方向にはおおらかに裾野を広げた月山を望むことができる。振り返ると古寺山から小朝日岳 を経て、尾根道がここまで続いており、だいぶ歩いてきたことが分かる。しばらく進むと、道の両側に再びヒメサユリが現れ た。こちらのものは、古寺山手前で見たものよりも、色が鮮やかで元気よく咲いている。なかには蕾のものもあり、まだまだ十 分楽しめる。淡いピンク色の花は名前通りで可憐そのものである。ハイマツの中に延びる道をさらに30分ほど行くと、3番目 の水場である銀玉水に至った。この脇にはちょっとしたスペースがあり、多くの登山者が休憩していた。銀玉水は岩盤に埋めら れたパイプからちょろちょろと流れ出ており、それを一口飲んでみる。!。とても冷たく、最高に美味い。さすが評判の水だけ ある。ペットボトルに満たした分を一気に飲み干してしまった。さて、そろそろラストスパートだ。ここから避難小屋を越え て、山頂までは急勾配の斜面が続く。息を切らしながらの登りだが、道の両側には様々な種類の花が咲いており、目を楽しませ てくれる。ミヤマリンドウ、シャクナゲ、ハクサンフウロ、ヨツバシオガマ、チシマギキョウ、ヒナウスユキソウなどの花を愛 でながら進んで行くと大朝日岳山頂避難小屋に到着した。小屋の前では小屋番のオヤジが忙しそうに何かの仕事をしていた。先 ほどの水場からここまでの登りはきつかったが、ここまで来れば焦ることはない。あとはのんびりと15分ほどで大朝日岳に到 着した。少し雲が広がってしまったが、360度の眺望は素晴らしい。すぐ隣には中岳、西朝日岳へと稜線が続き、その先は寒 江山、以東岳へと至る。さらに横には月山が存在感抜群だ。反対側に目を向けると、朝日鉱泉からの尾根道が延びている。遥か 眼下の谷底に小さく光っているのは、その朝日鉱泉の屋根だろうか。南の方向には東北のマッターホルンこと祝瓶山の個性的な 山体がひと際目を引く。さらに遠方の飯豊連峰は残念ながら雲に隠れてしまった。このパノラマを楽しみながら食事をしている と、ツアーの団体がどやどやとやってきたので、狭い山頂は大混乱となった。彼らはお決まりの記念撮影だけ済ませると、さっ さと下りて行ってしまった。食事を終え、ひと息つくと、こちらも山頂を後にするときがきた。今日は日帰りだ。下りも疲れる だろうし、東京までは長い。 ![]() ![]() ![]() 駐車場の奥を進んで行く すぐに古寺鉱泉朝陽館がある 樹林帯の急登でひと汗かく ![]() ![]() 右側の視界が開けてきて、眺望が得られる。まもなく尾根か まだヒメサユリが咲いていてくれたのには感激だ ![]() ![]() 2時間以上かかり、まずは古寺山に着いた これから向かう小朝日岳から大朝日岳へのルート 大朝日岳の肩に建つ小屋まではっきり見える ![]() 左から大朝日岳、中岳、西朝日岳の主稜線の眺め。朝日連峰の代表選手たちだ ![]() ![]() 古寺山を過ぎると分岐になる。直進は小朝日岳で右はその巻道 巻道からは月山を遠望 ![]() ![]() 熊越を過ぎたあたりに咲いていたヒメサユリは色鮮やかだった 快適なトレイルが続く。Y字雪渓はまもなく消えそうだ ![]() ![]() 月山のアップ 銀玉水に到着。ここで最後の休憩とする ![]() ![]() まるで冷蔵庫から出したような冷たさで最高に美味 銀玉水からの急勾配を終える 多くの花が咲いており、小屋まではのんびり歩く ![]() ![]() 大朝日小屋まで来れば、あともうひと息だ 5時間30分で大朝日岳に到着 ![]() ![]() 祝瓶山の山容が目を引く。飯豊連峰ははっきりと見えない 古寺山から続く尾根道を歩いてきた ![]() ![]() 中ツル尾根と、谷底に小さく光っているのは朝日鉱泉だろうか 竜門山、寒江山を経て、以東岳へ至る縦走路 ![]() 東北らしいたおやかな山並みが360度広がる <山行後記> 久しぶりの山行でかなりへばった。歩きだしから古寺山までが予想以上に長く、きつい ものだった。しかし、小朝日岳からの稜線は気持ちよく歩け、また多くの高山植物を楽 しむことができた。何より当初あきらめていたヒメサユリに逢うことができたのはとて もラッキーだった。まずまずの天候で、山頂からの眺望も十分だったと言える。 ![]() |
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