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昨今の富士登山ブームに乗った訳ではないが、早いところ済ませておかねばならない富士山だった。30年以上前に親に連れら れて一度行ったことがあるが、途中で引き返して登頂出来なかった記憶がある。今回のルートは山頂までの距離と標高差が少な い富士宮口からとした。来週からは富士山スカイラインがマイカー通行規制となり、5合目まで行けなくなってしまう。昨日の 夕方に5合目駐車場に到着した。レストハウス周辺の駐車場は無理だったが、時間が早かったおかげで一段下ったところにある 路肩に車を置くことができた。4時過ぎに起きて、ゆっくりと出発の準備をした。いったんレストハウスまで上がり、道路を越 えたところにあるのが5合目から始まる登山道だ。標高は2400mとなっている。5時25分、山頂へ向けて出発。初めだけ やや急な斜面であるが、その後は緩やかでフラットな道が続いた。足慣らしのつもりで行くと、早くも6合目に到着した。まだ 10分ちょっとしか経っておらず、いいペースでのスタートだ。宝永火口へは、ここから遊歩道で行くことができる。さて、2 軒並ぶ山小屋の裏手から新7合目を目指す。この区間はコースタイムが一番長い。斜面も勾配を増し、いよいよ登山らしくなっ てきた。東側の稜線からは朝日が射し始めてきた。6合目から40分で新7合目に到着した。休憩せずに更に先へ進む。上を見 上げるとすぐそこには山頂があるように見えるが、これは8合目か9合目あたりで山頂ではないようだ。振り返るとレストハウ スと駐車場がだいぶ小さくなっている。登山道は火山特有の砂礫で滑りやすく、岩もゴロゴロしているので注意が必要だ。次に 着いたのは元祖7合目だった。ここで標高は3000mを越える。岩場の道は斜度を増し、歩きづらくなってきた。上からは下 山する人が次々とやってくる。ペースダウンしながらも8合目に到着。小屋の前には大量の布団が天日干しされていた。スター トしてしばらくは快調だったが、疲れはじめるとガクンとペースが落ちてしまった。8合目を出たところで軽い頭痛と吐き気を 感じた。これは高山病の症状だろうか、座りこんでしばし呼吸を整える。歩き始めて数分もすると、足が止まってしまい先へ進 めなくなってしまった。すぐ上に見える9合目の山小屋が果てしなく遠くに感じる。途中で10分以上の休憩を2,3度してよ うやく9合目に到着した。小屋の前では万年雪で冷やした美味そうな缶ビールが誘っている。この先からは一段とゆっくりペー スになってしまった。下からはゆっくりと雲が上がってきており、7合目付近を包み始めている。何度も休憩を繰り返して、次 の9合5勺へは1時間以上かかって到着した。かなり体力を消耗している。その前にシャリバテだったのか、それほど食欲は感 じなかったが、とりあえず小屋でパンを買って腹に押し込んだ。ここでもたっぷり休んだ後、いよいよ頂上へ向けて最後の登り だ。と言っても、上を見上げるとかなりの距離を感じる。登りと下りの人が入り乱れるように列を作り、それがジグザグに頂上 まで続いている。ここへ来て体調が良くなってきたのか、疲れてはいるものの、立ち休憩で息を整えながら着実に登って行く。 そして最後に現れた鳥居をくぐると、ついに頂上の山小屋にたどり着いた。頂上には浅間大社奥宮が祀られ、その隣には富士山 頂郵便局が開設されている。小屋の前には多くの人がグッタリと横たわっており、自分も一緒になって休みたい気分なのだが最 後にひと仕事が待っている。小屋の裏に出ると最高点の剣ケ峰が見えてくる。火口壁に沿って左側に回って行くと旧富士山測候 所に続く馬の背という急斜面になる。これがなかなか大変で、端に付けられた柵を手摺り代わりにしてゆっくり登って行く。剣 ケ峰の手前では30人ほどが記念撮影の順番待ちをしていた。予想していたよりは少なく、20分も並ぶと順番がまわってきた。 さて、とりあえず無事に山頂に立てたので、安心してゆっくり休むことにした。上空は快晴だが、雲がだいぶ上まで上がってき てしまい、残念ながら眺望は得られない。しかし、山頂一帯の火山独特の眺めは素晴らしい。また富士山の雄大さと富士山が持 つ底知れぬエネルギーのようなものを感じることができる。ここまで登ってきて改めて思うことは、やはり富士山は大きいのだ と。 ![]() ![]() ![]() 駐車場から下は雲海が広がる 五合目のレストハウスで出発準備 山頂方向を見上げる ![]() ![]() いよいよスタート。しばらくは緩やかな道が続く 6合目まではあっという間だ ![]() ![]() 新七合目を過ぎたところから下を振り返る 順調なペースで元祖七合目までやってきた ![]() ![]() 八合目から山頂を見上げる 雲が上がってきて駐車場は完全に隠れてしまった ![]() ![]() 名前の通り、小屋の周辺では万年雪が見られる このあたりが一番きついところで、休んでばかりいる ![]() ![]() なんとか9合5勺まで着た。山頂はまだ遥か先のようだ ようやく富士宮ルート頂上に到着 ![]() ![]() 火口壁を辿って剣ケ峰を目指す 最後に馬の背を越えると剣ケ峰に着く ![]() ![]() 旧富士山測候所。記念撮影待ちの列に並ぶ ![]() ![]() 剣ケ峰から広大な火口を眺める 富士登山? 富士山観光? 巷では空前の富士登山ブームのようだが、そんな最中の山行となった。実際に登って みて、改めてそれを実感した。老若男女、国籍を問わず、昼夜人で溢れていた。富士 山に登るというのが、今ではそこらの観光地に行くのと同じような感覚になっている かのようだ。 富士登山はそんなに面白いのか?
日本の名峰、世界にその名を馳せる富士山だが、山登りの面白さとしてはどうなのだ ろうか。登山と言えば、樹林帯から高山帯、高原、沢、岩場、尾根といった地形や環
境が変化するなかを歩いたり、周りに広がる風景を楽しめるところが魅力であり、醍
醐味でもある。天気が悪ければ、花や樹木だって目を楽しませてくれる。その点、富
士山は花も咲かない赤茶けた溶岩の道を、ひたすらジグザグに登るだけ。シーズン中
はそれが行列となり、何かの修行のようにも思えてくる。眺めも、眼下に平野が広が
るだけで、とても山岳風景とはほど遠い。やはり富士山は眺めるための山であり、そ
こには象徴としての存在感しかないのではないだろうか。しかし、こんな経験のでき
るところは日本中で富士山しかないのも確かである。一度登ってみるのも一興なり。
<山行後記> もう少し楽に登れると思っていたが、日帰りだったためかかなりきつい山行となっ た。前半飛ばし過ぎてしまい、8合目からは休んでいる時間のほうが多かったよう な気がした。一度は登らなければならない山だけに、無事に登頂できたので良かっ た。 ![]() |
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