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飯豊連峰は福島、山形、新潟の3県にまたがり、主峰である飯豊山を 中心にいくつもの峰々を連ねており、また昔から山岳信仰の山とされ
ている。その姿はあくまでもたおやかで大きく、万年雪と多くの花々
に彩られており、朝日岳と並んで東北アルプスの一翼を担う存在であ
る。高山植物や、山を染める紅葉を楽しみながらの縦走が、この山の
一番の魅力だろう。
真夜中の林道を走っていると、数軒の宿が建つ集落が現れた。ここを抜けるとすぐに登山口のある川入御沢野営場に到着した。 いつものように、僅かばかりの睡眠をとる。五時過ぎに目を覚まし、出発の準備を始めた。数組のパーティが駐車場を出て行っ
たのを確認し、こちらも後を追うように6時15分に歩きだした。のっけからの急登は相変わらず堪える。すぐに大汗をかき、
早くもヒーヒーハーハー言いながらの登りとなった。やはりこの時間帯は好きになれない。色濃い森の中を45分で下十五里に
でた。空は曇りがちだが、雨の心配はないだろう。ときおり雲の隙間から青空も覗く。ゆっくりではあるが、中十五里、上十五
里、笹平、横峰と着実に歩を進めていく。横峰から30分ほどすると地蔵山方向への分岐が現れた。地蔵山へは行かず、左の道
を進んで行くと水場に着いた。ここまでの3時間半は、まあコースタイムといったところか。荷物を降ろして美味い水でも飲む
ことにしよう。さきほどから同じようなペースで登っているご夫妻がいたので、世間話などしながら休憩する。二人合わせて1
30歳と仰っていたが、年齢を感じさせない元気いっぱいのお二人だ。水場を出発すると、地蔵山からの道と合流する。この辺
りから視界が開け、眺望を得られるようになった。前方右側にはここから続く山並みが見えるが目指す飯豊山はまだ遥か先で、
その姿を見ることはできない。この先は岩場の道となった。両側が切れ落ちたヤセ尾根は足元に注意しながら慎重に越えて行
く。目の前の小さなピークに辿り着くと、そこは剣ケ峰だ。さらに岩場の急斜面を進むと三国岳に到着した。ここまで5時間1
5分かかった。ゆっくりペースだがどうにかコースタイムに納まっている。とは言え、まともに朝食は食べておらず、シャリバ
テ気味だ。三国岳避難小屋で昼食を摂ることにした。さて、当初は飯豊山頂上手前にある本山小屋まで行ければ、と思っていた
のだが、どうやらそこまでは行けそうもない。予定を切合小屋までに変更した。三国岳からはいったん下り、再び続く岩稜帯を
登って行く。休憩直後だと言うのに早くもバテ気味だ。小休止を繰り返し、三国岳から1時間半で種蒔山にでた。種蒔山から緩
やかに延びるトレイルの先には切合小屋が見えた。ここまで来ればもう少しだ。だいぶ気が楽になったので、道端に咲く花を眺
めながらのんびり歩いて行くと、切合小屋に到着した。時刻はまだ2時をまわったところだ。時間的には本山小屋まで行けない
ことはないが疲れていた。先ほどのご夫妻が小屋の前で美味そうにビールを飲んでいるのを見たら、これ以上歩く気が失せてし
まった。宿泊の手続きを済ませるとこちらも早速ビールタイムにしよう。このひとときが一番ほっとする瞬間だ。同宿する人た
ちと山談義に花を咲かせていると、いつしか雨が降ってきた。先へ進まずに正解だった。夕食後は早めに床に就くことにした。
さっきまで強く降っていた雨も間もなく止むだろう。明日もまずまずの天気に違いない。
![]() ![]() ![]() 川入御沢野営場の駐車場 森の中の急登を進む 下十五里。まだまだ先は長い ![]() ![]() ![]() 上十五里。早くもバテる 地蔵山と水場への分岐点 峰秀水で小休止 ![]() ![]() ようやく展望の利くところまでやってきた 一転して足場の悪い道に変わった。ここからは岩場が続く
三国岳から続くヤセ尾根を歩いて行く
![]() ![]() 剣ケ峰に到着。雲が出てしまった 5時間15分で三国岳避難小屋に。ここで昼食にする
![]() ![]() 三国岳避難小屋を振り返る この辺りの岩場歩きは意外とキツく、休んでばかりだった
![]() ![]() 垂直の岩壁には鉄梯子が架かる 種蒔に出るとようやく切合避難小屋が見えてきた
![]() ![]() 小屋までは緩やかな道。周辺にはまだまだ花が多い 間もなく崩れるスノーブリッジ
![]() ![]() 7時間40分で切合避難小屋に到着 あの山の先にある本山避難小屋まで行きたいが止めておく ![]() ![]() ![]() 水は豊富 ということでいつもの1本 ビールは2本目に突入
2日目の朝になった。外はまだ暗いが、ヘッデンを点けて4時25分に出発した。小屋の脇から緩やかに登って行くと30分た
らずで草履塚にでた。次第に空が明るくなり、目の前には飯豊山が現れた。見えているのは東側のピークで、頂上はその先にあ
る。さて、いったん下るとそこは姥権現だ。さらに御秘所を通過すると、最後の登りである御前坂にさしかかった。ハイマツの
中のジグザグ道をゆっくり進んで行く。振り返ると、ここまで歩いてきた尾根道が眼下に続いていた。前方左手には飯豊山から
御西岳、大日岳への稜線が雲間から見え隠れしている。斜面のところどころにある残雪が緑の中に良いアクセントになってい
る。30分ほどかけて御前坂を登りきるとテン場にでた。その先には本山小屋が建っている。小屋までやって来ると頂上はすぐ
そこだ。そして、朝から2時間30分歩いて飯豊山に到着した。上空は青空も覗いているが、周りには雲が広がってしまった。
いま一つの眺望だが、苦労してでも山頂を踏むことができたので大満足で、それ以上言うことはない。10名ほどの登山者が思
いおもいの時間を過ごしており、こちらも軽い食事をした。西方の稜線の先には御西岳があり、気持ちの良さそうなトレイルが
続き、その先には飯豊連峰最高峰の大日岳がある。御西岳まで行ってみたい気もするが、帰りのことを考えて下山することにし
た。
![]() ![]() 小屋を発って30分たらずで草履塚にでた ようやく見えてきた山頂方向。草履塚から一旦下る
![]() ![]() 姥権現を通過 目の前に大きく迫る飯豊山。山頂はあの先にある
![]() ![]() 雲がかかってしまった大日岳 本山避難小屋を目指して御前坂を行く
![]() ![]() 眼下にはここまで歩いてきた稜線が見える テン場を過ぎればもうすぐで避難小屋だ
![]() ![]() 本山避難小屋に到着。すぐに山頂へ向かう 飯豊山神社
![]() ![]() 緩やかな道を行くとすぐに山頂だ 2時間30分で飯豊本山に到着
![]() ![]() 御西岳、大日岳は雲に隠れてしまった 幾重にも連なる峰々がこの山の深さを現わしている
切合避難小屋 今回のコース上では一番大きな小屋で、さらに宿泊者は十数名しかいなかったので、 とてもゆったりと快適に過ごすことができた。自炊スペースは玄関脇にあり、周りを 簡素な壁で囲っただけのゴザが敷かれた部屋で、さながら海の家といった風情だ。基 本的には寝具なしで自炊のようだが、米3合を持参すれば食事を提供してくれる。あ る同宿の人は寝袋を貸してもらっていた。また、食事も代金を払えばカレーライスを 川入登山口に向かう手前、一ノ木集落にある山都町営の温泉保養センター。
料金は手頃で、泉質もなかなか良し。露天風呂はアブがたくさん飛んでおり、落ち着
いて入ってられない。風呂上りに食事処で食べた蕎麦が美味しかった。
![]() ![]() ![]() ![]() センジュガンピ ウツボグサ ハクサンシャジン イワショウブ
![]() ![]() ![]() ![]() ウサギギク カンチコウゾリナ ミヤマリンドウ タカネマツムシソウ
![]() ![]() ![]() ![]() ハクサンフウロ ミヤマシャジン ミヤマトリカブト ヨツバシオガマ
![]() オヤマリンドウ
<山行後記> 長い、とにかく長い。そして、深い。急登と足場の悪い尾根が続き、切合小屋の手前 まで休みどころがない。その切合小屋に泊まって、翌日登頂すれば余裕ある山行が可
能だが、タフなコースに違いはない。しかし、時季も遅かろうと期待していなかった
高山植物が想像以上に咲いていたので良かった。唯一の心残りは、イイデリンドウが
見られなかったことだ。
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