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百名山も完登することができ、のんびりと秋の山でも歩きたいと思い
旭岳は6年前に雪の積もるなか、一度登頂している。そのときは、ロープウェイ姿見駅から山頂までのピストンだった。積雪期 とはいえ、これで大雪山を登ったとするのは少しばかりおこがましい。今回は旭岳から黒岳まで歩き、層雲峡にぬけるという表 大雪縦走の定番ルートを行くことにした。 ホテルの部屋で出発の準備をしていると携帯電話が鳴った。時刻は間もなく5時になるところだ。携帯を手に取ると、朝から元 気の良い声が聞こえてきた。急いで階下へ降りて外に出ると、タクシーの前で先ほどの声の主がにこやかな顔で迎えてくれた。 人の良さそうなオジサンだ。今日、お世話になるタクシーの運転手さんと挨拶を交わし、早速出発することにした。話し好きら しく、車内ではいろいろな話を聞かせてくれたので退屈することがなかった。旭川周辺は9月になっても気温が30度を超える 日があったらしく、楽しみにしていた紅葉はだいぶ遅れているらしい。さて、旭岳ロープウェイ山麓駅に着き、運転手さんとは ここで一旦お別れとなる。一番のロープウェイに乗り、姿見駅でゆっくりと装備を整えると駅舎から外へ出た。ひんやりとした 空気に包まれ、目の前には旭岳が鎮座し、その姿に俄然やる気が沸いてくる。6時30分前に歩き出した。そう言えば、今日は 新調した山靴のシェイクダウンでもある。その感触を確認しながらまずはゆっくりと歩いた。15分ほど行くと姿見の池に着い た。以前やってきたときは池が結氷していたが、今回はその池越しに望む旭岳が朝日を受けて輝いて見える。ここまではまだ足 慣らしにもなっていないので先を急ぐことにした。6合目、7合目と順調に登って行く。この時期の北海道は気候が良いのか、 快適に歩くことができる。振り返るとロープウェイの駅がだいぶ小さくなっていた。ここまで変化に乏しい道程だが、周りは樹 木など遮るものがなく、どこを見ても好展望が得られる。8合目を過ぎると、標高は2000mを越えた。この辺りから登山道 は、火山礫と岩とが入り混じりとても滑りやすく歩きづらいものに変わった。9合目まで来ると急な登りは一段落し、さらに金 庫岩の脇を通りしばらく行くと旭岳に到着した。まずは山頂からの眺めを楽しむことにする。南側の山塊は十勝連山で、その隣 にトムラウシ山がある。登ってきたほうを見ると、地獄谷から上がる噴気の向こうに姿見の池とロープウェイの駅舎が小さく見 える。その背後には美瑛の街をはじめ、広大な平野を俯瞰することができ、いかにも北海道らしいおおらかな風景だ。その反対 側、山頂の向こうには安足間岳、比布岳、北鎮岳、凌雲岳、北海岳、そして白雲岳といった大雪の名峰がずらりと並んでいる。 どれも特徴ある姿をしている。これから目指す黒岳も奥のほうに見える。とにかく眺望抜群で素晴らしい。しかし残念なことに、 紅葉にはだいぶ早かったようだ。燃えるような錦秋の山並みを期待していたのだが。さて、今日はここがゴールではない。まだ 先が長いので食事を済ませ、再び歩き出した。後旭岳を正面に見て東側の斜面を下って行くが、ここは砂礫の急斜面でとても厄 介なところだった。熊ケ岳の火口壁のわきを過ぎ、しばらく行くと間宮岳に着いた。こちらからの旭岳は今まで見ていたものと 比べて穏やかに感じられる。目の前には御鉢平の荒涼とした風景があり、この周りを右に進めば北海岳、左なら北鎮岳方面とな る。辺りは夏ともなれば、たくさんの花が咲き誇るに違いない。今ではチングルマの綿毛が風に揺れている。きれいな山容を見 せる北鎮岳に向かってゆるゆると歩いて行くと中岳にでた。ここはピーク感に乏しく、そのまま通過する。登山道は尾根状の道 に変わり解放感が増した。先ほど旭岳から眺めた山々の、今はその真っただ中にいるのだ。周りの山肌はモノトーンのグラデー ションを描いており、火山特有の風景を眺めながら緩やかに登って行くと北鎮岳の肩に着いた。すぐそこには北海道で二番目の 標高を誇る北鎮岳がある。さて、どうするか。30分ちょっとあれば戻ってこられるらしい。それほど疲れはないが、下山後に 余裕が欲しかったので諦めることにした。上空は雲が広がってきたものの、眺望を遮るほどではないので問題はない。しばらく 進んで行くと御鉢平展望台にでた。巨大なカルデラが口を開けている様子が手に取るように見渡せる。アップダウンの穏やかな 道の先には溶岩台地で形成された雲の平が広がっていた。山の斜面はところどころ色付いているが、本来ならこんなものではな いだろう。ハイマツの中にあるウラシマツツジの赤がいいアクセントになっている。夏には素敵なお花畑になる様子が想像でき、 のんびり歩ける良いところだ。黒岳石室に着いたのは11時40分過ぎだった。小屋の前には多くの登山者がおり、こちらもそ のなかでひと休みすることにした。下山後はできれば層雲峡を13時30分に出る旭川行きのバスに乗りたいが、時間が足りな いかもしれない。さて再び歩き出すと、黒岳へは最後の登りとなる。20分もあれば頂上で、ここからは今日歩いてきた山並を 見渡すことができた。この眺めに別れを告げ、あとは観光客と一緒に下山開始。ポツポツと雨が降ったり止んだりのなか、7合 目まで下るとリフトとロープウェイを使って層雲峡には13時45分に到着した。これで姿見駅から7時間あまりかけた大雪山 縦走の終わりを迎えた。駅舎から外へ出ると朝のタクシー運転手さんが、お帰りなさいと笑顔で待っていた。なんだかとても懐 かしい感じだった。せっかくだから温泉にでも入ってさっぱりして下さいと、近くの日帰り温泉に案内してくれた。温泉で汗を 流し、快適なタクシーのシートに身をゆだねると、心地良い疲れと眠気がやってきた。空港まで少しばかりのんびりできるだろ う。 ![]() ![]() ![]() 昼食は有名な梅光軒のラーメン 旭川を訪れると夕飯はいつもこれ! 最高に美味いジンギスカン ちょっと食べ過ぎた ![]() ![]() ![]() 姿見の池から朝陽を浴びる旭岳を見る。ここからいよいよ登りにはいる ひと登りしたところで振り返ると ![]() ![]() 旭岳西側の爆裂火口跡を間近に 十勝連山とその左にはトムラウシ山 ![]() ![]() ![]() ここらで登りも一段落 山頂が見えてきた 金庫岩を過ぎれば間もなく ![]() ![]() 1時間45分で旭岳に到着 眼下に地獄谷の噴煙とRW駅を俯瞰する 山頂からの眺めはこちら 北海道ならではの雄大な眺めが広がる ![]() 東側の山並み。左から安足間岳、比布岳、鋸岳、北鎮岳、凌雲岳、手前のクレーターは熊ケ岳 ![]() ![]() 後旭岳の奥には白雲岳、その左のトンガリは烏帽子岳 安足間岳と比布岳。ほんの少しだけ色付いているが ![]() ![]() 反対側から見る旭岳の山容はまったく違うもの 熊ケ岳のクレーター越しの旭岳 山頂からの下り斜面が怖かった ![]() ![]() ここから北海岳方向と北鎮岳方向に分かれる 裾合平を回って姿見駅に戻るルートもある ![]() ![]() この辺りは人もまばらでとても静かに歩ける 荒涼とした御鉢平 カルデラの底から有毒温泉が沸いているが、どこかは不明 ![]() ![]() 間宮岳、中岳ともにピーク感に乏しく、丘の上にいるよう 稜線の先には北海道第2の高峰、北鎮岳が待っている ![]() ![]() ![]() 長い時間をかけ浸食された岩のオブジェ 北鎮岳分岐 北鎮岳はあきらめた 行っておけば良かったと少し後悔 ![]() ![]() 御鉢平を右手に見ながら緩やかな道が黒岳まで続く ここからは御鉢平を一望できる 向こう側を歩いている人が見える ![]() ![]() ![]() 夏には花の楽園となる雲の平を進む。ここは今日一番のんびり歩けるところだ。黒岳がだんだん近づいてきた 雲が広がってきたが、景色を見ながら気分良いトレイル ![]() ![]() 5時間ちょっとで黒岳石室に到着 黒岳山頂手前から振り返ると歩いてきたルートが見渡せる ここまで来ればあと少し。最後の休憩とする ![]() ![]() 黒岳に到着。観光客とおぼしき人々もいる 下山途中に層雲峡を眼下に眺める タクシーを手配し、下山予想時間を伝えておいた ![]() ![]() ![]() 7合目からはリフトに乗って 次はロープウェイで一気に まもなく層雲峡に下山となる 下山後にタクシー運転手に案内してもらった。層雲峡のバスセンターのそばにある日
帰りの施設。無色透明の湯の中に黒い湯の花が舞っている。3階には露天風呂があり
四季を通して大雪の山々を眺めながら湯につかることができる。登山や観光で訪れた
ときに最適。
大人600円
<山行後記> 天気もまずまずで、大雪の山々の眺めを楽しみながら快適に歩くことができた。やはり火 山の山歩きは何度やってもおもしろく、なんと言ってもそのスケールが大きい。期待して いた紅葉はほとんど空振りに終わってしまい残念だった。旭岳を中心に裾合平や銀泉台方 面に行ってみるのもいいだろう。その時はぜひ花の咲く頃にしたい。それから今回、送り 迎えをしてくれた個人タクシーの運転手さんにはいろいろ良くしていただいた。
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