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天を突く鋭鋒。登山をしなくてもその名を知らない人はいないだろう。 日本の山岳史で、ここまで多くの登山家を惹きつけて止まない山はな い。孤高の頂、槍ケ岳。アルピニスト憧れの山は、まさに北アのシン ボルである。 秋の5連休は北アルプスでも歩いてみようと思っていたところ、職場の工場長が 槍ケ岳に行くということなので、自分も槍ケ岳を目指すことにした。
2年前に上高地から登頂したので、今回は新穂高温泉からのアプローチとした。
出来れば、鷲羽岳と水晶岳にも行ってみたい。
工場長は上高地からなので、うまく行けば上の山荘で合流出来るだろう。
【 新穂高温泉 --- 槍ケ岳山荘(泊) --- 槍ケ岳 --- 鏡平山荘(泊) --- 笠ケ岳 --- 新穂高温泉 】
深山荘の駐車場に着いたのはそれほど遅くはなかったのだが、さすがに大型連休ですでに満車となっており、第一ロープウェイ 鍋平高原駅の手前にある駐車場にまわされてしまった。翌朝は6時過ぎに登山口のある新穂高温泉駅に向けて歩き出した。最短 コースで行こうとしたが、これが大失敗。大変な目に遭い、ようやく登山口に着いたのが7時過ぎだった。早くもテンションが た落ちだが、気を取り直して出発した。登山者で賑わうターミナルを過ぎ、右俣林道を進んで行く。すぐ右手に延びる近道を登 って行くと穂高平避難小屋にでた。ここでは水を補給するだけにした。林道をさらに進むと白出沢から始まる穂高岳登山口との 分岐にあたった。このルートからの穂高岳も興味がある。分岐を過ぎると、すぐに白出沢に突当たり、右俣林道の終わりとなっ た。水の無い沢を渡ると、左手に笠ケ岳のゆったりとした山体を見ることが出来る。空は青く、今日も最高の天気だ。さて、道 は斜度を増し、登山道らしい様相を呈してきた。林の中を行くのだが、よく陽が当たり暗さはない。ブドウ谷、チビ谷を渡り、 さらに進むと滝谷となった。ここには避難小屋があり、前の沢には勢いよく水が流れていた。橋で対岸に渡り、再び樹林の中を しばらく登って行くと、槍平小屋に到着した。新穂高を発って約4時間がたとうとしていたので、ここらで休憩しよう。軽い食 事を摂っていると、工場長からのメールが入っていたことに気付いた。それによると、1時間半ほど前に槍沢ロッジに着いたそ うだ。こちらも急ぐことにした。小屋の先にあるテン場を過ぎ、針葉樹林帯から岩ゴロの道をひたすら登って行くと、徐々に空 が開けてきた。標高は2000mを越えている。しかし、まだ1000m近く登らねばならない。この先さらにきつくなりそう だ。ペースは落ちてきたが、着実に高度を稼いでいく。しばらく続く森を抜けると、やがて行く手が一気に開け、前方には奥丸 山から延びる中崎尾根が現れた。ここから先が飛騨沢である。灌木帯を行く登山道は開放的で、尾根からの斜面はところどころ 色付き始めており、まさしく秋の風情だ。千丈乗越の手前あたりから、飛騨沢の上部を見ると槍ケ岳山荘が見えてきた。ようや くここまでやって来たという感じだ。山荘目指して進んで行くが、なかなか近付かない。体力も少なくなり、休む回数が増えて きた。我慢して登り続けると、道は砂礫のジグザグに変わった。数分歩いては立ち休憩をしての繰り返しで、ついに飛騨乗越に 上がった。ここまで来ればあと一歩だ。まずは尾根からの眺めを楽しみたい。息を整えながら、しばらくの間、最高のパノラマ に目を奪われていると、工場長から槍ケ岳山荘に着いた旨のメールが入ってきた。良いタイミングだ。それから10分ほどでこ ちらも槍ケ岳山荘に到着した。歩き始めてから8時間以上かかったが、まずはほっとした気分だ。工場長とも再会することがで きた。目の前には青空を突くように大槍が聳えている。しかし、そこには山頂を目指す長蛇の列ができており、本日中の登頂は 諦めることにした。 ![]() ![]() ![]() ![]() 7時15分、新穂高ターミナルを出発 穂高平避難小屋で給水する 奥穂高岳へ直登する白出沢コース入口 ![]() ![]() ![]() 笠ケ岳。肩の小屋もはっきり見える 滝谷出合から見る北穂のドーム 11時10分、槍平小屋に到着 ![]() ![]() 樹林帯を抜け、徐々に高山帯へと変化していく 色づき始めた飛騨沢を登って行く ![]() ![]() 千丈乗越の分岐。すでにかなり体力を消耗して牛歩状態 飛騨沢を振り返ると、向こうに笠ケ岳 ![]() ![]() 小刻みに休みながら登っており、なかなか尾根に乗れない 西方には薬師岳、鷲羽岳、水晶岳 ![]() ![]() ![]() ようやく飛騨乗越にでた 初めて現れた槍の穂先 大喰岳への縦走路 ここで工場長から山荘着のメールが届いた ![]() ![]() 尾根の向こう側には槍沢が広がる 8時間15分で槍ケ岳山荘に到着。工場長と無事に合流できた 槍ケ岳山荘の混雑は凄かった。どこもかしこも人で溢れかえった状況だった。当然ながら睡眠不足で2日目を迎えた。工場長は すでに登頂し、上高地へ戻って行った。列に並んで、のろのろと登って行くと、6時30分に山頂に辿り着いた。2年前と違 い、そこから見る景色は最高の一語に尽きる。どこを向いても絶景だ。ようやく立つことが出来た頂だが、ゆっくりしている時 間はなさそうだ。下からは次から次へと人がやって来る。それに押し出されるように梯子を下ることになってしまった。さて、 山荘まで戻ってきたが、これからどうするか。鷲羽岳、水晶岳への予定を変更して、今日は鏡平まで行き、そして明日に笠ケ岳 を目指すことにした。昨日はかなり疲れたので、今日と明日は楽なほうがいいだろう。朝食を済ませ、西鎌尾根を歩き始めた。 この尾根は槍ケ岳から延びる尾根の中では歩き易く、さらに眺めも良い。快適なパノラマルートだ。左手には笠ケ岳があり、そ の手前の斜面には本日の目的地である鏡平山荘が見える。正面には鷲羽岳や三俣蓮華岳をはじめ、雲ノ平周辺の山々が。そし て、振り返ると槍ケ岳だ。樅沢岳を過ぎると、西鎌尾根の終わりも近い。やがて双六小屋に到着すると、ここで早めの昼食を済 ませ、すぐに鏡平へ向かうことにした。キャンプ地の脇を進んで行くと尾根に出る。ここからの槍穂連山の眺めは素晴らしいの だが、いつの間にか雲が掛かり始めていた。今後の展望はあまり期待出来そうもないようだ。双六小屋から1時間ほど歩くと弓 折乗越だ。あとは一気に下って鏡平山荘に着いた。時刻はまだ1時40分過ぎだ。時間はたっぷりあるので、山荘前のテラスで ビールでも飲んでゆっくりすることにしよう。 ![]() ![]() 黎明の槍ケ岳 朝日を浴びて目覚める笠ケ岳と槍ケ岳山荘 ![]() ![]() 穂高連峰に続く稜線の右奥には御嶽、乗鞍、焼岳、大正池 下りと合流するところでは停滞してしまう ![]() ![]() ![]() 大ノマ乗越あたりに突き刺さる影槍 槍ケ岳に到着 ![]() ![]() ![]() 今日は西鎌尾根を通って、鏡平を目指す 山荘直下のガレを下ると歩き易くなる ![]() ![]() 千丈乗越を通過。ここから延びる中崎尾根も歩いてみたい 振り返ると常に槍がある ![]() ![]() 抜戸岳と本日宿泊する鏡平山荘が見える 小さなアップダウンが続くが、とても歩き易い西鎌尾根 ![]() ![]() 昨日、駐車場から登山口まで道探しをしたあんちゃんと再会 山荘を発って2時間ほどたつ。次第に槍が遠くなっていく 双六小屋から三俣方面へ行く予定を変更して槍を目指すそうだ ![]() ![]() 樅沢岳に到着。裏銀座の山々が間近になってきた 双六岳と双六小屋。ここで早めのランチとする ![]() ![]() 弓折乗越まで緩やかな稜線を進む ライチョウ三兄弟に遭遇。幼鳥らしくまるで警戒心がない ![]() ![]() 弓折乗越からは鏡平まで下るだけ 鏡平山荘に到着。今日は時間がたっぷりある。まずはビールだ ![]() すっかり曇ってしまい、水面には槍ケ岳が映らない 槍ケ岳山荘 秋の5連休のためか、槍ケ岳山荘の混雑は凄かった。650人収容の山荘があっと いう間に一杯になってしまい、その後も次から次へと登山者がやってくる。廊下や ホールにも人が溢れ、ゆっくり落ち着くことができなかった。さすがの槍ケ岳山荘 もこの日は隣の南岳小屋への宿泊をお願いするほどだった。割り当てられた部屋は 玄関外の診療所にギュウギュウ詰め。もちろん熟睡はできるはずもない。 <山行後記> 上高地からのルートよりも距離は短いが、やはり登頂するのは同じように苦労させ られた。とくに飛騨沢の登りはかなり堪えた。槍ケ岳山荘での混雑には参ったが、 この時期であれば仕方がないところだろうか。しかし、以前の登頂時と違って、天 候に恵まれたのは何よりだった。西鎌尾根は終始眺望に優れた、のんびり歩ける楽 しい縦走路だ。秋晴れのもと最高に充実した山歩きができた。
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