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飛騨の名峰、笠ケ岳。蒲田川を挟んで槍穂高連峰と対峙し、新穂高側から眺める と、山頂部の尾根まで一気に立ち上がる姿は重厚感がある。緩やかに続く稜線の 上に笠を被せ、周囲の山からでも目立つ存在だ。笠ケ岳は主脈から外れており、 まさに槍穂高の展望台とも言える、この山ならではの素晴らしいパノラマが魅力 だ。 【 新穂高温泉 --- 槍ケ岳山荘(泊) --- 槍ケ岳 --- 鏡平山荘(泊) --- 笠ケ岳 --- 新穂高温泉 】
昨日と違って鏡平山荘はとても快適だった。食事も美味しく、よく眠ることが出来た。朝5時に外へ出たが、まだ暗いので明る くなるまで少し待つことにした。空模様のほうは昨日よりも良くないのは明らかだ。何人かが出発したので、こちらもそれに続 いてヘッドランプを灯して歩きだした。まずは昨日と同じ道を戻ることにする。初めの急登をこなすと後は緩やかな登りにな り、40分ほどで弓折乗越に着いた。だいぶ明るくなり、ヘッドランプは要らなくなったが、僅かだが雨が降り出してしまっ た。これ以上、天気が悪くならなければ良いのだが。この尾根を右に行くと双六岳方面だが、笠ケ岳へは左になる。数分歩くと すぐに弓折岳に着いた。完全に雲の中といった感じで、景色はほとんど見ることが出来ない。弓折岳はそのまま通過する。一旦 下ると鞍部になり、ここから大ノマ岳への登りが始まる。行く手を見ると雲の間から小高いピークが見える。しばらく進むとそ のピークに達した。山頂標もなにも立っていないが、ここが大ノマ岳だろう。さらに先へ進むことにする。左手には一面の雲の 中から槍が穂先を覗かせており、なんとも幻想的な眺めだ。先ほどよりも若干雨が強くなってきた。たいした雨ではないが、と りあえず雨具を着ることにした。再び歩き出すと道は緩やかになり、しばらくするとやがて秩父平に出た。ここは尾根のすぐ下 に広がる小さなカールで、夏には一面お花畑になる素晴らしいところだ。もちろん今はそんな景色は見ることは出来ない。カー ルの底からジグザグに登って行くと再び尾根に出た。この先はそれほどきつい登りもなく、ハイマツ帯のゆるい上下をこなして いく。気がつくと抜戸岳分岐までたどり着いた。それほど歩いた気がしないのは、眺望もなく黙々と歩き続けた結果だろうか。 抜戸岳頂上には向かわず、すぐ下を巻いて行くと新穂高へと下る笠新道との分岐がある。この辺りからは、天気が良ければ笠ケ 岳へ続く稜線の眺めが素晴らしいのだが、残念でならない。しばらく進み、抜戸岩を越えるとそろそろ山荘も近いのではないだ ろうか。先ほどから弓折岳で会ったおじさんが、同じペースで後ろにくっついて来る。今日は双六小屋から来て、笠ケ岳に登頂 後は新穂高に下りるそうだ。おじさんと微妙な間隔を保ちながら、さらに行くとキャンプ場に到着した。テントは見当たらな い。ここからは板状節理の岩場の登りとなり、やがて目の前に笠ケ岳山荘が現れる。歩き始めて4時間が経過していた。山荘で 一息ついた後、ザックをデポし山頂へ向かうことにした。ゆっくり登っても10分ほどで笠ケ岳の頂上に到着した。こんな天気 のため景色云々ではないが、ほとんど雨が上がったことは幸いだ。これ以上の長居は無要なので、写真だけ撮ってさっさと下る としよう。朝から何も食べていなかったので、笠ケ岳山荘に戻って来ると軽く食事をすることにした。例のおじさんは美味そう にラーメンをすすっている。さて、食事も済んだのでそろそろ帰ろう。笠新道は新穂高まで一気に急降下して行く。その下りは ハンパではなく、前穂高の重太郎新道と同じようだ。ここで昨日に続いて今日も雷鳥に出会うことが出来た。好天ならばゆっく りしたい杓子平を通過し、とにかく下を目指す。前を行く下山者は次々に追い抜いて、さらに高度を処理していく。例のおじさ んも頑張って付いてきている。雲が切れてくると、眼下に中崎山から奥丸山に続く尾根、その麓に流れる蒲田川を俯瞰出来た。 しかし、これだけ下ってきたというのにまだまだ遥か眼下で、改めてこの笠新道の急登ぶりが感じられた。笠新道の登山口には 山荘を発って3時間20分で戻ってきた。後は林道歩きだけだ。 ![]() ![]() 出発の朝、外は一面ガスで覆われていた 弓折乗越から少し行くと弓折岳だ ![]() ![]() 登り返した先にあるのが大ノマ岳?と思われる 穂先を覗かせる槍ケ岳はまるで墨絵のような雰囲気 ![]() ![]() 笠新道の分岐。気がつくとここまで来ていた 名物の抜戸岩を過ぎれば、もう少しで笠ケ岳山荘か ![]() ![]() 笠ケ岳山荘に到着。荷物をデポして山頂へ向かう 鏡平から4時間20分で笠ケ岳に到着。眺望なし。すぐ山荘に戻る ![]() ![]() 笠新道を下山中。中崎尾根は見えるが、槍穂高は相変わらずだ 長い下りを終えてようやく笠新道の入口まで戻ってきた かなり下ってきたと思うが、登山口はまだ遥か下だ 鏡平山荘 昨日の槍ケ岳山荘の混雑は尋常ではなかった。ホールや廊下にまで人が溢れ出して の大騒ぎ。その前の五竜山荘もそうだったが、この時期の週末はしかたがないか。 朝、鏡平山荘に電話で聞いたらそれほど混雑はしないということだ。双六小屋も考 えていたが鏡平に決定した。鏡平山荘は快適で食事も美味しい素敵な山荘だった。 また、混雑もなく、のんびり過ごすことができたのが良かった。 <山行後記> 最近の北アルプスでは好天続きだったが、今日は生憎の天気となってしまった。しかし 笠新道から登る覚悟のところを、弓折岳から楽に行けたのでラッキーだった。なにより 無事に笠ケ岳の頂上に立てたのが良かった。機会があれば、次回は晴れの日に笠新道か ら挑戦してみたくなった。
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