71トムラウシ山


 悪天候の長距離はかなりしんどかった
とむらうしやま


(2141m)
                                                                                 北海道上川郡美瑛町・新得町


          大雪山系の最奥、山懐に抱かれたトムラウシ山はどのルートからも遠く
          長い時間歩かなければ山頂に立つことが出来ない。それ故に貴重な動植
          物をはじめ、手つかずの素晴らしい環境が残されている。深山にひっそ
          りと佇む遥かなる頂は岳人憧れの名峰である。


              北海道の山の中で一番気になっていたのがトムラウシ山だ。
                  この山は日帰りするには楽ではない。
         その上、帰りの飛行機の時間もあるので10時間で戻って来なければならない。

        【 旭川空港 --- 十勝岳 --- トムラウシ温泉(泊) --- トムラウシ山 --- 旭川空港 】


 2008年9月7日    

 ・コース
  短縮登山口⇔カムイ天上⇔コマドリ沢⇔前トム平
  ⇔トムラウシ公園⇔トムラウシ山

 ・行き 5時間30分 、 帰り 3時間50分

 ・標高差 1175m
          
 ・歩程 18.4km
  


昨日は十勝岳を終えるとトムラウシ温泉に移動し、東大雪荘に投宿した。ここは国民宿舎だがとても立派で小奇麗な宿だ。出来
ればもう少しゆっくりしたかった。朝3時半に目が覚めると外からは雨の音が聞こえてきた。予報通りとは言え憂鬱になる。な
かなか起きる気になれず、しばらくベッドに横になったままだ。結局宿を出たのは4時半になってしまった。30分車を走らせ
ると短縮登山口へ到着した。駐車場にはトイレはあるが水場はなく、車が5台ほどしかいない。予定の時間よりすっかり遅くな
ってしまった。準備を済ませ5時15分、雨の中を歩き始めた。なだらかな道を進んで行くと、まずトムラウシ温泉への分岐に
出た。右がトムラウシ山だが8.5kmと書いてある。先は長い。やや斜度が増してきた道をさらに50分でカムイ天上と言う
ところに着いた。眺望が得られず天上どころではなく、また、登山道は昨日からの雨でたくさんの水溜りができており歩きづら
い。ここから笹原を切り拓いた新道になる。林を抜けると雲が切れたようで、一瞬雨が止み薄陽も差して来た。すると近くの山
並みが姿を現した。右手には前トムラウシ山があり、その先に目指すトムラウシ山があるはずだ。この辺りは本来なら気持ちよ
く歩けそうなところかもしれない。その後はしばらく下りの道が続くが、これがヌタヌタ状態で足首まで泥水に浸かってしま
い、足元はすっかり泥だらけとなってしまった。だいぶ標高を落としたところでコマドリ沢に出た。200mほどの沢はもう少
し早い時期なら雪渓が残っているが、今は水も流れていない。さて、出発してから間もなく3時間になろうとしている。疲れも
あるが、雨の中、時間を気にしながらなので精神的にもきついものがある。果たして山頂にたどり着けるのかとさえ考えだし
た。とりあえず歩くしかない。沢に沿って登ると、その先には溶岩石が敷き詰められた広い斜面が現れた。この岩の上を慎重に
渡って行くと、そこはケルンのある丘だ。開放感があり、天気が良ければトムラウシ山が目の前に見えるのだが。また、この岩
場では愛くるしいナキウサギの姿を見ることが出来た。ケルンのある丘を過ぎると、その先にあるのはトムラウシ公園だ。大小
の奇岩と沼が点在し、それがガスの中に浮かぶ様はとても神秘的だ。ゆっくりこの景色を楽しみたいところだが、その時間は無
く、こんな天気ではどうしようもない。前からやって来た登山者に聞くと、山頂まではもう少しだと言う。右手方向に続く斜面
からは十数人の団体が下りて来た。これが最後の上りだろうと20分ほど頑張ると遂にトムラウシ山頂上に到着した。どうにか
タイムリミットには間に合った。疲れているがさっさと下山開始だ。泥だらけになりながらも、帰りは思ったより早く着くこと
が出来た。


  
       短縮登山口には数台の車              雨の中、歩き始める           15分ほどでトムラウシ温泉への分岐

  
          天上とは名ばかり              登山道は水溜りで泥だらけ            一時的に薄陽が射すことも

 
       カムイ天上をしばらく進むと前トムラウシ山が現れた                  この先からいったん下りになる

 
    コマドリ沢を登り始める。それほど距離はなく、雪渓もない           コマドリ沢の上部で4人のパーティーとすれ違う

 
           岩礫帯を過ぎると前トム平に出る                    ケルンのある丘。ここでナキウサギを見た
 
           ようやくトムラウシ公園までやってきた                      自然が織りなす美しい庭園風景

 
              様々な形の岩が点在する                       目の前の斜面を登りきると山頂になる

 
   5時間30分でなんとかトムラウシ山に到着。すかさず下山する            今回の基地とした国民宿舎 東大雪荘



           とりあえず山頂に立てたのは何より
           はじめから日帰りするにはたいへんな山という思いがあったので、当日の雨天には参って
           しまった。泥濘の登山道には閉口する思いだし、歩いて行くうちに蓄積する疲労と、帰り
           の飛行機のために11時までに登頂しなければというタイムリミットもあったので、精神
           的にきつい山行であった。とくに前半は歩きながら、登頂を諦めて戻ろう戻ろうという気
           持ちと常に戦っていた。悪天候による眺望なしの登山なら慣れっ子だが、時間を気にしな
           がらの長い行程はボディブローのように効いてくる。こんな日は早発ちすることぐらいし
           か手だてがないのか。


           トムラウシ温泉 東大雪荘
           国民宿舎というのでもっと小さな宿を想像していたが、とても立派でモダンな宿だった。
           食事はまあまあで、温泉は内風呂が多少の塩素臭が気になったが、川を眺めながらの露
           天風呂はなかなか良い。通常は二人以上からのようだが、一人登山のときは予約時に確
           認するといい。筆者は一人で利用したが、部屋は綺麗でこざっぱりしており、とても快
           適であった。玄関先に汚れた靴を洗うためのコーナーがあり、下山時には重宝した。空
           港に戻る前に温泉でサッパリしたかったのだが、時間がなく温泉には入れなかった。




        <山行後記>
          一時は登頂を断念しようかと思っただけに、無事にたどり着けたのでほっとした。
          前半は退屈な道が続くが、コマドリ沢からは見どころに富んだ変化のある道が続
          いた。雨のため、道の悪さには閉口する思いをしたが、こんな天気でもトムラウ
          シ山の素晴らしさは十分感じることが出来た。山深いところだけに、日帰りする
          には時間に余裕ある行動を心がけたい。



       9月6日 十勝岳





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